Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

Illusion Is Mine 2023年、冬の冷たさから春。かなしみがかわくまで。

カナリヤです。日常報告シリーズ音楽編。

前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

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なんだか随分久しぶりな気がしますね。これから上げていきたいなぁ。

 

sububan blues / computer fight


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2019年に結成された4人組のロックバンド。ここまで直球でゴリゴリにインパクトを残すサウンドは近年では珍しい。その鮮度抜群のパフォーマンスにはあっという間に魅了されてしまった。確かな技術に裏打ちされた彼らはライブバンドという表現が相応しい。現段階ではワンマンを開催できるだけの動員は難しくとも、機会さえあれば対バン相手を悉く喰ってしまうだろうことは容易く想像できてしまう。ヒリヒリした原始的なその存在感は、加速する社会において僕らをこんなにもザワつかせる。

 

 

行 / 5kai


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京都出身で現在は都内を中心に活動する、オルタナティヴバンド「5kai(ゴカイ)」による2ndアルバム。ミニマル故にソリッドな音像を突き詰め飽きさせないリズムを備える彼らには、もはや使われすぎて凡庸でありきたりと言ってもいい「唯一無二」という表現を真っ先に思い浮かべてしまう。downyのように様々な手法で肉付きを増していくインディペンデントさとは異なり、極限まで削ぎ落としても彼らの色を失わない。むしろどこまで行けるのかを試すかのように。ひとたび彼らの音楽に触れた瞬間、適性ある人間は呼応し、ゆっくりとその世界に侵食される。それはきっと僕だけではないはずだ。

 

 

Burned Car Highway Light Volcanic / Prizes Roses Rosa (p rosa) (panda rosa)


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「Panda Rosa(パンダ・ローザ)」、「p.rosa」あるいは「p rosa」、現在は「Prizes Roses Rosa (p rosa) (panda rosa)」の名義で様々な音源を発表し続ける、オーストラリアはメルボルン在住のベンジャミン・フィチェットによるアルバム。

なんだろう、これは。不思議な作品だ。全編を通じて特徴的なパーカッションがこんなにも鮮やかに耳に残るというのに特別秀でたドラミングとも思えない。激しく映るサウンドも随所に透明さを際立たせ、決して領分を犯そうとはしない。閉じた世界で存分にその美しさという牙を研いでいる。陶酔感の極致がここにある。

シューゲイズ的なシンセもムーディーな混声ボーカルも、多種多様に散りばめられたサンプリングもなにもかも。それらはただ単純にそこに在るだけだ。母なる海がそこに在るように。本作の主体があくまでも「大海」という圧倒的な軸により構築されていることを意味する。「Through」の終盤、まるで深海の底を漂うかのような美しさは必聴だ。目を閉じて、ひたすらに揺蕩え。2時間弱という長尺が織りなすこの大作がもたらすアンビエントな音楽体験、その受動的なスタンスこそが最も本作を味わい尽くせる方法だ。

 

 

Overside / kasane vavzed


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kou / kizumono名義でボカロPとしても活動するkasane vavzedの2ndアルバム。

僕は所謂保守的な人間だ。特別必要だと思わないものや新しいものにそこまで食指は動かない。安定した環境を捨てて自ら生活を変えようなんてさらさら思わないし、それを阻害するだろうモノには最大限の警戒をする。なぜなら「分からないモノ」は怖いのだ。理外にあるものをどう受け止めて良いのか、皆目検討もつかない。

けれど新しい景色を見せてくれるのは大抵が自身の理解が追い付かないものだろう。あるいは嗜好に共通する「何か」を見出だすことさえできれば、たちまち無視できない存在として昇華していく。

冷たく、ひたすらに蠢くビートに、無機物であろうとするように過剰にエフェクトされたボーカル。才能というものがこんなにも恐ろしい。kasane vavzedの仕掛ける脳を揺らすサウンドスケープは、凡そこれまで僕の好き好んできた感性からは大きく掛け離れている。分からないものは怖い。これまでの僕が壊されてしまいそうだから。でもこの恐怖に触れてみたいと思う僕の欲求を無視できない。kasane vavzedはこんな僕の狭量な嗜好をぶち壊す、新機軸となるのだろうか。

 

 

かなしみがかわいたら / THE NOVEMBERS


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つい最近まで音楽を聴くことに悦びを見出だせない瞬間が多々あった。良い音楽であるとか、好みであるとか、逆にジャンル的に好きじゃないとか、そういうことを度外視してなんとなく音楽が「いらない」と感じる瞬間。最近までの僕は平時でなければ音楽に寄り掛かれない。それはその状態が「異常」であるということ。心身の不調がそうさせていることは明白だった。

私事ではあるが、ここ数年患っている持病への治療が息詰まったことで今度から新しい治療を試すことにした。まだ試せる治療法があるということは自体は喜ばしいことだと思うし、今後の寛解には期待してもいる。そもそもこの持病自体が命に別状があるわけではないし、生活に支障をきたすわけでもない。人によっては平気で無視して気にもとめない。その程度のもの。

ただ僕にとってはここ数年のうち自身の心を悩ます最も大きな存在なのは間違いない。だからこそそれまでの治療の過程で完治するために必要なことだと見込んで半ば自棄になりながらも投入した費用や時間が無駄になったという事実と、今後の治療のためにまた新たに費用と時間が吸われ続けるという事実ははっきり言って重い。心にこびりつく。のしかかる。気持ちが落ちていくことが抑えられない。

そしてその最悪なタイミングで諸手を挙げて歓迎なんてできない用事に駆り出され、もう何度目かも覚えていない自身の尊厳を自ら踏みにじる状況に身を置く羽目になった。望まない感情を晒し鏡に映る醜い自己と向き合う日々は久々に、この世から消えてなくなりたいと思うには十分な時間だった。

 

この曲を聴いたのは、まさしくそんな時だ。久々に鳴らされた彼らの新譜。ピンと張ったピアノの音とそこに被さるシューゲイズの優しい旋律。日常を思わせる牧歌的な穏やかさ。内にも外にも向けられた希望に満ち満ちた歌詞は彼らのここ数年の活動の制限でささくれだった心がまた再生していっているんだと実感させてくれる。そして、この僕も。

聴いた瞬間に「やっぱり好きだな」と素直に思ったのだ。思えたのだ。今のやさぐれた僕にでも彼らの新譜は心に届いてくれた。新しい、けれどどこか懐かしい。包み込むような和やかな刺激は、肩に優しく、ポンと何の気なしに手を置かれる感覚に等しい。単にタイミングの問題かもしれない。おそらくは他の曲、他のバンド、他ジャンルに触れたときでも似たような感覚を抱いたのかもしれない。けれどほんの少し。ほんの少しだけ、鬱屈として重さを増した感情も同時に軽くなったのは、この上ない悦びだった。

彼らのかなしみはかわいた。では僕は?僕自身のかなしみはどうだ?忌々しいそれはいまだ頬に留まったままだ。沈着し拘泥し、かわく兆しはまだ見えない。見えないだけで、今はかわいていく途上であるということではないか。いずれは彼らのように誰かの心を暖められるような朗らかな気持ちを再び抱けるはずだ。その時こそ彼らに負けないように僕にとっての海を見に行こう。世界中の綺麗なものを僕のものにしてみせる。かなしみはもう十分だ。

 

 

 

はい、まぁ何を言いたいかというと、やっぱり音楽って良いもんだなってことですよ。じゃあご飯作ってきます。ではまた。