カナリヤです。あけましておめでとうございます。遅いか。本日は2022年に発表された音源の中から特に素晴らしかったと感じたものをランキング形式で1位から10位まで挙げていこうと思います。
なお昨年のベスト10はこちら。
さて、ベスト10発表の前にルールとしまして、
- 発表時期は2022年に限定
- フルアルバムのみに限定
ということを念頭に読んでいただければ。また上記の条件に合致していないながらも、ここでどうしても挙げておきたかったものを番外として選出しました。
それでは始めます。
番外
Just Kids.ep / ART-SCHOOL
9thアルバム「In Colors」から4年ぶりとなる、長い活動休止を経ての4曲入りシングル。
痛みと共に待ち望んだ復活は相も変わらぬ無機質な温もりを与えてくれる。この安堵感は理性を超越した証拠だ。今はただ彼らが、ART-SCHOOLが帰還した安らぎに酔いしれよう。おかえりなさい。また会えてよかった。これからもよろしく。
10
Dreams Drenched in Static / Cremation Lily
イギリスのロンドンを拠点とするZen Zsigoのソロプロジェクト「Cremation Lily」による9thアルバム。
エクスペリメンタルとシューゲイズの狭間で揺れ動きながら暴力的な衝動は容赦なくこちらに噛みついてくる。時折見せる海の静寂も、瞬きのうちに荒れ狂う波濤へと姿を変えていく。
9
Les Misé blue / syrup16g
syrup16gが5年ぶりに発表した11thアルバム。
彼らもまた変わらない。だがそれでいいのだとも思う。下卑た笑いを浮かべながら笑えないことを垂れ流し悪態をつきながら、同時に乾いた涙を流している。そんな歌をずっと歌い続けてくれた彼らを僕らはまだ必要としているのだと思い知る。
8
燦然 / zezeco
「downy」の中心メンバー・青木ロビン氏とテクノアーティストManukan(マヌカン)氏によるユニット、その1stアルバム。
バンドサウンドを主軸としない青木ロビンというのも新鮮だ。浮遊するグルーヴは酔いの回った深夜に聴くと、格別な味わいを放つ。ループする旋律に不明瞭なボーカルが合わさればたちまち中毒性を帯びて僕らを溺死させてくる。
7
Stalled Flutes, means / Asian Glow
韓国・ソウルを拠点とする Asian Glowの3rdアルバム。
泡沫の夢。閉じた世界でノイズ混じりのくぐもった音達が踊っている。美しく映るだけの残影ではない。汚濁に塗れ過ぎ去った日々というのも悪くないものだ、こうして思いを馳せられるんだもの。
6
flying colours / florelle
デジタル・ドリームポップ・ブレイクコアバンド「florelle」による2ndアルバム。
生き急ぐイメージを捨て切れないブレイクコアというジャンルにおいて、本作におけるドリームポップとの融合という要素は、その余裕のなさがあくまでも一面的に過ぎないことを訴えかけてくる。機械的なのに、どこか優しい。穏やかに、艷やかに漂いたい。
5
Eye Escapes / Kraus
Will Krausによるソロプロジェクト「Kraus」の4thアルバム。
正統派シューゲイザーは過去と現在の、儚くも美しい情景を脳裏に焼き付ける。目を閉じて地平線を眺めていたくなる。いつもと同じ朝日が昇ることに、無性に感謝をしたくなる。生活に密接にリンクする音楽というものはそれだけであまりにも貴重だ。僕はきっと一生Krausを聴くのだろう。
4
A LIGHT FOR ATTRACTING ATTENTION / The Smile
Radioheadのトム・ヨークとグリーンウッド、SONS OF KEMETのトム・スキナーからなる新バンドのデビューアルバム。
ミニマルな構成故に息を吐くように展開されるダークな世界観が、その儚い声が、迫り来る音が、永遠に聴いていられるような、耳を閉じたくなるような残酷な心地よさを抱かせる。ひどく見え透いた注目を浴びるための光に、僕は笑顔を浮かべながら人を喰ったような彼らが奏でる、皮肉めいたチルアウトに喜んで身を投じる。そうしたいと願うのだ。不安にさせろ、と心から。
3
THE SPELLBOUND / THE SPELLBOUND
「THE NOVEMBERS」の小林祐介氏と「BOOM BOOM SATELLITES」の中野雅之氏によるオルタナティヴ・ロックバンド。その1stアルバム。
ポップという音楽ジャンル、そのエンターテインメント分野において今現在最高峰の位置にいると言っても過言ではないのではないか。ポップという言葉自体に抵抗感を覚える根暗な僕が、その厳かでありながら軽さを失わない圧倒的な音圧によってこの得難い音楽体験に飲み込まれてしまった。陥落したのだ、現代の魔法に。
2
I Didn't Mean To Haunt You / Quadeca
「Quadeca」の名で知られるラッパー"Benjamin Lasky"による2ndアルバムにして、初の完全セルフ・プロデュースアルバム。
生命の終わり。身近に感じていたい死という存在を美しく描き切ってくれることを僕はいつだって望んでいる。幽鬼のように、このまま終わっていくことを願うのは決して悪いことではないはずだ。それが心からの発露であるなら。
1
Ugly Season / Perfume Genius
Mike HadreasことPerfume Geniusが2019年に上演された振付師ケイト・ウォリックによるダンス作品「The Sun Still Burns Here」のために書き下ろした楽曲からなる最新アルバム。
閉じ込められる感覚、とでも言うのだろうか。静寂が辛くない。その先に待つ物語に思いを馳せるのは観客席にいる僕らの特権だ。曲の終わり、舞台転換という隙間でさえもその間すらも一息つくことに消費できることはこんなにも贅沢な時間なのだと思い至る。この一年、最も聴いた。華麗で、凡庸とは程遠い。しかし無邪気に様々な表情をすぐ隣で絶えず見せてくれた本作が、この1年のベストに相応しい。
はい、ということで2022年の1位はPerfume Geniusの「Ugly Season」でした。1~3位は本当に僅差ではありましたが「身近に在ってほしい音楽」を問い続けた結果、僕はこの「Ugly Season」を選んで聴くことが非常に多かったのです。自然な感性によって僕が今求める音楽とは何なのか。自分のことながらなかなか興味深いですね。
2022年も豊作と言っていい年でした。今年もそうなるといいなぁ。それは僕の幸せに直結してくれることだから。
それではまたいい未来で会いましょう。