Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

Illusion Is Mine 2021.11〜2022.1

カナリヤです。現状主だって書いている日常報告シリーズ「最近あなたの暮らしはどう」が同人ゲーの内容のみに言及していて、ブログとしての柔軟性がなくなってるのあんまりよくないよなぁと思い1年近く放置していた「Illusion Is Mine」を音楽関係に焦点を当てたシリーズとしてこちらも定期的にダラダラと書いていくつもり。書いていくぞ。書いていくんだ。書いていきたい…なぁ(願望)。

ちなみに前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

 

 

アルバム

燦然/zezeco


www.youtube.com

2022年発表。変拍子を駆使したアングラサウンドで日本におけるインディーロック界で独自の地位を確立しているバンド「downy」の中心メンバー・青木ロビン氏と沖縄を拠点にアジアで活動するテクノアーティストManukan(マヌカン)氏によるユニット、その1stアルバム。エレクトロを軸としてノイズやダブといった要素を演奏とプログラミングによる組み合わせにより様々な音像として描き出しており、これまで青木ロビン氏がdownyとして発表してきた、その複雑な構成においてもなおバンドサウンドに主眼を置かれていた作品集の数々とは趣の異なる異色の作品。

 

cacophony/Dhal


www.youtube.com

2004年発表。こちらも青木ロビン氏繋がり。「downy」のフロントマン・青木ロビン氏と、同じく「eksperimentoj」のフロントマン・若命優仁、そしてトラックメイキングを務めるDJ/Geru-seeによる変わり種ユニット。元々は映画「ラブドガン」のサウンドトラックとして制作。二人のボーカリストによる中性的かつ感情を抑えて静寂さを保った歌声と、深遠を思わせる暗く、這うようなビートやサウンド・テクスチャーが、常にゾクゾクした感覚を呼び起こす。黒を基調とした背景にぼんやりとした輪郭の薄暗い緑を中心に据えたジャケットに映るは、妖艶な女性の佇む姿。暗がりの中ですら覆い隠すことのできないその痛々しい顔の爛れはその異様さと不気味さに、本作の音楽性の豊かさとが絶妙に合わさったことで残酷なまでの美しさという圧倒的な魅力を抱かせる。

cacophony

 

評論本

my bloody valentine Loveless

批評してないので正確には批評本とは呼べないけれど。

"ピンクの表紙のマイブラ本"こと熱狂的なマイブラファンであるマイク・マクゴニガル(あえて敬称なし)による著書。バンドメンバーによる承認を経ての制作であることやインタビューの発言は正確に引用したと記載はあるが、捲った際の免責事項にて「マイブラのオフィシャル本ではない」「主観・感想はすべて著者によるもので、バンド自身のものではない」と明記されており、マイブラの2ndアルバム「Loveless」の名をタイトルに冠しているものの、実質的に著者による同人誌である。

当時、バンドリーダーであるケヴィン・シールズが今まさに生み出そうとしている未知の音像に対して、理解を示すもの、理解できないもの、ただただ戸惑いながらそれを眺めるものなどなど。バンドメンバーの証言を交えながら「Loveless」という存在の意義、その大きさ、後世への影響を浮き彫りにしていく。そして何より著者によるマイブラ愛がひたすらに伝わってくる本著は、マイブラの音に魅了されたすべての人間にとって圧倒的な共感とそれに比例する羞恥にも似たエモさ、もしくはこれほどまでにひとつの対象への盲目的にも思える愛情をひしひしと伝えられることに、ほのかな嫉妬心を抱かせるに違いない。

 

痙攣

zinekeiren.thebase.in

ライター・李氏氏を中心として数々の若手ライターが集った音楽批評ZINE。これまで2冊刊行しているなかで音楽がいかに現実世界の影響を受けたうえで生み出されているのか。いかに音楽が現実世界に影響を与えてきたのかを独自の視点で描き出す。社会情勢の変化といちバンドの姿勢を比較し論じていたり、ひとつのバンド、一枚のアルバムを読み解いてその意義や味わい深さを訴えていたり。そして時には国内外のアイドルを比較しこれからの国内アイドルの問題点を浮き彫りにするアイドル論などなど内容はまさしく多種多様。刊行ペースは1年に1冊程度だが、そのエッジの効いた内容を思えばむしろ当然というもの。「ないものを探し出す」という他では見られない独自の音楽論を紡いでいくことを、いち読者としてこれからも期待している。

 

弱虫のロック論

国内のロック・ポップスを創成期から見つめ続けてきたライター平山雄一氏による音楽評論集。忌野清志郎ユニコーンMISIAスピッツなど国内音楽を牽引してきた彼らを取り上げながら、日本の音楽界がいかにしてこれまでの地位を築いてきたのか、国外の音楽との違いとは何かを、制作論やマーケティング論を交えつつ、あくまで客観的に書かれた国内音楽歴史学的な位置付けのシリーズ。

個人的には、シリーズ2作目において著者が目の当たりにした東北大震災復興におけるミュージシャンとして取るべき姿勢について論じていた項が非常に印象的だった。東北生まれで今なお東北に住まう僕としては音楽イベントに参加するミュージシャンの面々からこれみよがしに語られる「勇気を与えたい」という文言をそれ自体は東北を思って起こした行動であることに感謝しつつも、どこか傲慢にも感じていた。決してすべてのミュージシャンがそうだったと言いたいわけではないが、さも定型文のように何度も用いられるその綺麗な言葉にしこりのようなものを抱いていたのは事実だ。本作ではミュージシャンが時折見せるその「与える側」であるという姿勢を真っ向から批判し、音楽にはそれほどの力はないのだと明確に断じている。音楽ができることは立ち上がる力を与えることなどではなく、ただただ慰めることだけだと。立ち上がることはその一人一人の力なのだと。ミュージシャンに近い立場でありながら、彼らに媚びることなく音楽の素晴らしさとは何かを映し出していく本作は音楽と人、もっと言えば遍く文化と人との関係性を改めて考えさせられる。

 

 

最近になって音楽評論の本をちょこちょこと読むようになってる。自分にはない視点、自分では浮かびもしない観点から発せられる「音楽とは?」という批評の数々はきっとこれからの僕の音楽との関わり方に良い影響を及ぼしてくれるはず。むしろなんで今まできちんと読んでこなかったんだってくらい。

…ということで僕の拙い記事を読んでくださった奇特で人の良い方で、「この本面白かったよー」なんてものがありましたらドシドシ投げつけてくれると大変ありがたし。それではまた。

 

 

※参考といいますか、僕もまた音楽記事を書きたいなーと思わせてくれたブログ

modernclothes24music.hatenablog.com

sigh-xyz.hatenablog.com