Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2023.2~4

カナリヤです。日常報告シリーズ同人ゲーム(一部商業)編。

前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

ようやく暖かくなってきました。そろそろ炬燵を片付けようかと思います。また秋にでも会おう。

 

 

送電塔のミライ

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「里見しば」氏制作。伝奇サウンドノベルフリーゲーム。離れ小島の化け物を退治するために訪れた少女ミメイとそこで暮らす人々との交流を描いた物語。記憶と想いをキーワードに寂寥感を掻き立てながら、随所で夏の日差しの爽やかさ、どこか懐かしい雰囲気に浸らせてくれる優しいお話。

和装の装いや人々の穏やかさ、それに似つかわしくない送電塔の硬質感が独特な雰囲気を醸し出しています。やや説明不足なまま進むテキストや後半の駆け足気味の展開には戸惑ってしまいましたが、フリーゲームでこれだけのものを味わえたら些末な問題でしょう。

ちなみに一番好きだったお話はなにげに閑話だったり。本編に組み込む程ではなくとも、普段スポットの当たらないキャラクター達の奮闘に胸打たれるのはそれだけ本作を評価している証左かと。ハナちゃんの想いが切なかったです。テツがんばれ。

 

 

ムートン・ノワール

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「羊おじさん倶楽部」作品。フリーゲーム。山奥の寮学校に軟禁された男の子たちがむごたらしく殺される日常を淡々と描いたスプラッターホラー。立ち絵もCGもない本作はどこか他人事のようにも思えて、それが世の中に理由もなく存在する残虐性をさも当然であるかのように如実に描写していく。ゆっくりと、粛々と流れるジムノペディの調べは僕らが普段目を背けている現実だ。

日常に同化していく子供たちの死は、諸行無常のそれだということなのでしょう。自身と関わりのない子供たちが次々に殺されていく様を面白いなぁと安全圏から呟けることに、「観測者」でいられることに、「物語」として消化できることに感謝しつつ、今日も元気に心を擦り減らしていくとしよう。

 

 

グリザイア:ファントムトリガー vol.8

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「Frontwing」作品。グリザイアシリーズ。「グリザイアの楽園」から3年後を描いた、血と硝煙に彩られた少女達の物語、その最終巻。メインライターである藤崎竜太氏の人生哲学、といいますか人を食ったようなお説教じみたテキストって無性に読みたくなる瞬間ありますよね。ということで1年遅れでプレイ。

最終巻である本作では序盤から中盤にかけて主人公の敵側の人々の逃亡劇が描かれていたり、過去7作発売してきたファントムトリガーでは初の選択肢を採用しているのが特徴。またこれまで色濃かったコメディ色は比較的薄めに仕上げていることもあって、これまでの過去のシリーズとはだいぶ印象の異なる作品となっています。常々殺伐とした世界観だとは思っていましたが、過去作が奪われる側から力でもって奪う側に回った少女たちの視点で描かれていたのに対して、今作はいわば過去の少女たちのような力のない人々=奪われる側の視点がより強調されているためか戦場の悲惨さの描き方にも輪をかけて容赦がありません。ナタリーが、ナタリーが可愛い。可愛かった。可愛かったんだ…。

不満点といえばついに邂逅した因縁の敵との最終決戦が案外あっさりと終わってしまい終盤の物足りなさが顕著だったこと。まぁこのあたりは過去にライターを務めてきた作品同様に藤崎さんクオリティという感じで予想はしていました。ただファントムトリガーの過去作では各ヒロインに焦点を当てていきながらそれぞれの成長や在り方といった部分にきちんとカタルシスを用意していたので短いながらも非常に満足感がありましたが、総力戦である本作はその辺りブレてしまった印象ですね。

そういう意味ではBADENDもスポット的に描かれるに過ぎなかったとある登場人物の心情が描かれる個別ルートとして見れば非常に面白かったんですが、とは言っても初出となる1作2作で各登場人物たちの掛け合いの魅力にバチコーンやられてこれまでを追ってた(最終作はここまで引っ張ってしまったけども)身としてはなんだかんだ後味の良い完結編を楽しめたことは素直に喜ばしい。

 

 

デイグラシアの羅針盤

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同人サークル「カタリスト」作品。水深700mの海底に沈んだ潜水艇を舞台にしたSFサスペンス。状況が刻一刻と変化する環境においての最善の選択とは何か?あの時こうしていたら。或いはしなければ。後悔は未来にこそ抱くものであり、その瞬間の選択はたとえ結果が伴わずとも最善であったのは間違いないはず。

繰り返す記録と記憶は当事者たちを慰めこそすれ、事実を決して捻じ曲げはしません。決めるのはあなた。正解のないノベルゲーム。ただ決して優しい物語などではありません。これ見よがしに用意されたハッピーエンドですら、何かが、誰かが足りない。たとえ嘘でも誤魔化されやしない。辿り着けない「真実」を前にできることは目に焼き付けること。彼らがどう生きたのか。本作はそれを辿るお話です。

序盤こそ一部キャラのエキセントリックな言動に戸惑いはしましたが、中盤以降は怒涛の展開に目が離せませんでしたね。最終的にときわがお気に入り。いやー良いサスペンスでございました。

 

 

TRUE REMEMBRANCE

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「里見しば」氏制作。フリーゲーム。忘れたいほど悲しい記憶を持った人々が訪れる、白い街。セツナ病とも呼ばれる症状の原因となる悲しい記憶を封じる「封士」を生業にする青年「黒目」のもとを訪れた「ラ」という少女。彼らの日常と、街を訪れる人々との出会い、そして小さな秘密。錆色の記憶を巡る、寂しくも暖かな物語。

自己とは記憶の積み重ねであり、記憶とは誰かとの触れ合いです。記憶は心を支えもしますが時に心を縛りもします。忘れたいほどに苦々しい記憶を本当に忘れられたら、それはどんなに善いことでしょう。そんな機会がもしあれば心の弱い僕はきっと迷わず選択するはずです。ただそれは結果的に「何か」を失ってしまうのかを理解せずにただ苦しい今をどうにかしたいという浅はかな感情です。弱さを楯に忘れられたその何かに思いを馳せることはもうできません。だから彼女は泣くのでしょう。声も上げずにただホロホロと。それはきっと記憶に縛られることよりも悲しいことでしょうから。

冬を舞台とした本作の雰囲気は、まだ肌寒くそれでいて温かさも感じられる4月には非常にマッチした作品でした。

 

 

春ゆきてレトロチカ


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スクウェア・エニックス作品。過去と現在を行き来しながら100年に渡って起こった4つの殺人事件とその不可解な事件に関わる四十間(しじま)一族に隠された謎を説き明かす本格ADV。実写映像で展開される本作は「街 ~運命の交差点~」「428 ~封鎖された渋谷で~」などで心を掴まれたプレイヤーは非常に興味を惹かれるものだった一方で物足りなさも覚える作品となっています。

各章はそれぞれ「問題編」「推理編」「解決編」に分かれており、プレイヤーは主人公であるミステリー作家・河々見はるかの視点から「問題編」で提示された謎を「推理編」で手がかりをパズルのように組み合わせ仮説をいくつも出しながら「推理編」において正しい選択肢を選び解決に導いていきます。

「問題編」はキャストの好演も光りドラマ仕立てで展開への興味を掻き立てるものになっていた一方で問題なのは「推理編」です。ここで作中で得た手がかりを組み合わせていくわけですが…ぶっちゃけ作業に近いです。プレイヤーの意思によって仮説を練り上げていくというよりは用意された答えをただただ積み上げていくという感が強く、正直飽きます。「解決編」にて選んでいく仮説もあくまで材料に過ぎず端的な内容に終始しておりさほど当てにできず、結局推理自体はプレイヤー自身が組み立てなければなりません。なかにはどう転んでも答えになり得ないトンチンカンな仮説もあったりしますがそれらもきちんと導かないと新たな仮説を提示できなかったりとやや苦行に近いものとなってしまったのは大きなマイナスポイントと言えます。事件の謎自体は徐々に難易度が上がっていく歯ごたえのあるものに仕上がっており、もっとプレイヤーの意思をより反映させられるシステムであればより飽きずにこのパートを楽しめたのではと思うと甚だ残念。

あとは「街」や「428」のようなマルチエンディングが採用されていない点も本作の評価を難しくしている要因かと思います。間違った選択肢を選んでもそこで別ルートに移行するわけでもなくただゲームオーバーというのはやはり味気ないです。本作の軸を思えばマルチエンディングではないのは理解できますが、「間違った選択肢を選ぶ楽しみ」がない、というのはいわゆるスルメ感のなさに繋がり、本作を繰り返し遊ぼうという気には到底なり得ませんからね。

ただ単純な推理ドラマとして見た場合は非常に満足度の高い一品だったと思います。4つの殺人事件を扱うため登場人物自体は多いのですが「登場人物を現実の人物に当て嵌める」ことでキャストを使い回している点もなかなか面白いです。まぁ当初は人件費諸々への経費削減策では?と訝しんだわけですが、キャストの演技力も見応えがあり違和感なく各事件に没頭できたのはお見事。ネタバレになるので詳述はしませんが、核となる謎にはキャストの使い方が非常に関係していてすっかり騙されてしまいました。頭のなかであの時の違和感はこれだったのか!と思わず膝をパーンと打ちたくなる推理モノ特有のあの感覚はたまりませんね。

フェアな推理を謳う本作はゲームとしての自由度のなさは明確な欠点ではあってもお話を楽しむ上では損はない、そんな作品でした。なんだかんだ文句言いつつもADV大好きマンなのでもっとこういう作品が出てほしいなと密かに期待しているところです。シリーズ化待ってます。

 

 

こんな感じです。ようやく調子が戻ってきたような、というよりも取り戻さなくちゃいけないなぁと感じる日々。次は大作にでも手を出してみましょうか。それではまた。