Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2022.8~9

日常報告シリーズ同人ゲーム編。前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

疾く去れ夏、とは日々念じていたものの、突如として現れた冬に翻弄される始末。地球さん、そんなに慌てないで。まずは小さい秋を見つけるところから始めさせてくれませんか。

 

 

ぐらぐらする

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「染居衣奈」氏制作。フリーゲーム。どげざ2021作品。ホラーノベル。大学卒業後、希望した企業へ就職し充実した社会人ライフを歩む新入社員の主人公が、なぜか雨の日に限って"ぐらぐらする"お話。

ほぼ地の文のみで構成されキャラクターの立ち絵もほとんどない本作は一見するとどういうお話になるのか想像がつきません。そういう意味では非常に不親切な作品ではあるものの、徐々に徐々に現実に通じる居心地の悪さが垣間見えてきます。普通に生活していて、ほとんどの人はその場の状況を脳内で言語化することなく視覚や聴覚からの情報をそのまま受け止めています。本作も同じなのだとどこかの時点で気づくはず。そうして把握する。察するのです。モブ感溢れる登場人物たちがどこにでもいる「誰か」であり、ここで描かれる「誰か」は日々懸命に生きる「僕ら」であることを。

僕は田中さんにはなりたくはありませんが、さりとて中川さんのようにもなりたくはありません。主人公が思うように、飄々と日々を過ごす高橋さんになれたら。それは高望みなのだとしても、せめて傘を差してもらえる、そして傘を差し出せる自立した大人でありたいものです…もちろん、人は選びますが。

 

かみかくしの夜

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サークル「Digitall」制作。フリーゲーム。自称本格推理モノサウンドノベル。のっけから隠す気が全くないかまいたちの夜リスペクトはいっそ清々しいほど。「あなたのせいで、死体が増える」っていつ聞いても秀逸なコピーだな、と改めて。本家に思い入れがあるばあるほど、作者の掌で転がされてしまう気がします。

本作の仕掛けにはいとも簡単に引っかかりましたし、困惑の中で周回してENDをすべて回収するくらいにはのめり込んでしまいましたが、ラストに用意されたおまけシナリオの雰囲気が絶望的に肌に合わなかったことが残念と言えば残念。おまけと言えどシナリオを補完する要素があることで全体把握の意味ではプレイ必須ではありますし、それならどうにかして本編内に組み込んでほしかったというのが正直なところ。徹底的に無駄を省いた非常にソリッドな出来のテキストに満足していただけに、最後の最後で肩透かしをくらった印象です。

 

絶対零夜ノ殺人

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「出雲セリカ」氏制作。フリーゲーム。脱出不可ホラーサスペンスノベル+α。上記と同じくかまいたちの夜リスペクト。展開の変化とともに都度更新される情報画面が非常に親切で、作者の優しさを感じられる作品です。主人公が抱く登場人物への印象がコロコロと変わっていくのが微笑ましくて画面を何度も観ちゃいましたね。あまり見ない友達のお姉さんヒロインとの微妙な距離感が好き。

ただし、推理パートにおける難易度は高め。でも犯人との対決シーンでは当てずっぽうが当たってしまいました。やったぜ。解決へのヒントに関しては作中外にいろいろ用意しているものの「答えを見つける達成感」を存分に味わってもらいたい、という思いから直接的な文言は一切入れない念の入れよう。おかげで深夜までウンウン唸ることになりましたが、やはりこのカタルシスは格別なもの。おまけ要素もふんだんに用意されていて、クリア後も余韻に浸らせてもらいました。

 

神林家殺人事件

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『実在の事件を元に作られた』推理ADV。豊富に盛り込まれた有名推理ゲームのパロディが魅力ですがそれ以上に素晴らしいのは推理ゲームとしての構成。全ての伏線には意味があり、抱いた疑問には必ず答えがある。テキストの端から漏れ出るスプーンひとさじ程の違和感の数々は、それが真相へのヒントだということにも気づけないほどにあまりに緻密で繊細に散りばめられています。作者からの挑戦状は実に鮮やかで、巧妙です。

個人的にこの手のRPGエディターで作成されたADVはそこまでプレイ経験がなく、新たな扉を開いた感がありますね。

 

魔女魔少魔法魔

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「警戒しなくていいよ! 私は君を世界の暗がりから救い出すために、はるばる地獄の底からやって来たんだから」

サークル「羊おじさん倶楽部」作品。人工甘味チック・シュール・デス・コメディ。魔法少女と少年とのほのぼの?としたポップ?で愉快?な邂逅の日々。地獄から来たはた迷惑なリリカル魔法少女と害悪と呼ばれるはた迷惑な主人公の少年との意味のない掛け合いが楽しく、いつまでもこの絶望に浸っていたくなります。なんでしょうね、人って無数の屍の上でもゲラゲラ笑えるもんなんだなって思いました。

陰鬱とした羊おじさん倶楽部の作品を常に清々しい気分で終えられるのは、各々が露悪的な絶望を描きつつも最後には「幸福」というものを追求してくれているからだと思います。地に足をつけた閉塞感や生々しさは、それが現実と遠くない場所にあるんだと気づかせてくれるのです。故に届く。故に響く。以前にプレイした「音無き世界その代わり」でのカナエの憤慨を心地良く思えるように、作中で彼と彼女が辿り着いた願いに共感するように、僕もまた自らの幸福を追求していくのだと改めて戒めようと思います。

 

ところで、ヒロインののろいちゃん、やたら可愛くないですか?この片足ピョン!としてる立ち絵がめっさツボなんですが。

「専属魔法少女!これってもう宝くじにあたったどころじゃない幸運ですよ、もっと大袈裟に喜んで?床ローリング気味に悶絶して?」

地味に上履きと外履きとで差分用意されてるのずるい。狡猾。床ローリングするから無視しに来てくれないかな。

 

 

 

8月の無味無臭な日々はなかなか精神的にクるものがありましたが、こうして改めて趣味に勤しむと気分も上向いてきますよね。失ったものを取り戻すべく、これからも楽しんでいきます。