Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2022.7

カナリヤです。日常報告シリーズ同人ゲーム編。前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

暑くなってきましたね。疾く去れ、夏。

 

紙一重の想い人

booth.pm

サークル「猫と心中」作品。フリーゲーム。どげざ2021作品。生者に問う一本道ノベル。退魔を生業とする家系で生まれ育った高校生が、悪いものに憑かれやすいバイト先の先輩のためにあれこれしようとする、ほろ苦い青春譚。「正しく在ること」よりも「正しく在ろうとする」心に寄り添った少年の無力感は、彼を一歩大人へと近づけます。短いながらも登場人物たちの優しさと矜持と後悔とが絶妙に交差する一品でした

 

君とサクラを

https://www.silversecond.com/WolfRPGEditor/Contest/result05.shtml

水無月 恵」氏製作。フリーゲーム。記憶喪失の男が陰謀渦巻く病院からの脱出を目指すミステリーホラーADV。古き良き名作ADVを彷彿とさせる不気味な雰囲気と一癖も二癖もある登場人物による人間模様、直接的ではないにも関わらず生々しく描写されるエロスといった要素で構成される本作はとてもフリゲとは思えません。序盤は情報が少なく手探りで読み進めていくものの終盤での怒涛の伏線回収がモヤモヤを一気に昇華させてくれるのもお見事。

ただ場面転換時にシーンが飛んでしまっていたり、同じテキストが連続で表示されたりとシステムが不安定なことが難点。またおそらく当初の予定では本作に選択肢やマップ移動を採用することでより没入感を高められる仕組みを導入するはずだったのでは…?と思えるような箇所も見受けられるのも本作の未完成感を強めていますね。

アクの強い登場人物や本編にまとわりつく不穏さは一級品なだけに足りない部分に目がいきがちなのはなんとも惜しい。バグ修正やシステム強化などを図った完成版を是非ともプレイしたいものですが…さすがに無理か。

 

佐倉家異聞「万華鏡奇談」「朧月夜鬼談

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※左側サイトバナーの「Digital Novel」から飛べます。

サークル「かつみや」作品。フリーゲーム。地方の名家「佐倉家」に纏わる奇怪な出来事を綴った和風ホラーADV。村の因習。忌み子。鬼子。狐憑き。そして禁忌。それらが織りなす複雑な人間関係は閉塞感に苛まれた人間という存在への恐怖に彩られ、読む人の情緒に訴える耽美な文体の美しさが不気味なほどによく映えます。同サークル作品「幻想魔境奇譚」でみせた心理描写に長けた文章力は健在。テキスト演出も実に凝っていて突然下から出てくるなどホラーならではの「どうなるのか分からない」恐怖感を助長させていましたし、またヘッドホン推奨というだけあってBGMや効果音はもちろんのこと効果的に差し込まれる音声が臨場感を演出していたのも、ヒタヒタと忍び寄るような恐怖心を煽っていましたね。お兄様。

第一話時点では蔵という密室を舞台とした短編ホラーという印象でしたが、過去を描いた第二話では閉塞感に満ちた佐倉家の狂いっぷりをこれでもかと描いており、その救いのない凄惨さは一話が可愛く見えてくるほど。いや、むしろ読了後は描かれることのない一話と二話のその幕間こそが恐ろしく思えてくる。見えないものに恐怖を見る。それはなかなかできることではないと思うのです。

惜しむらくは現状第二話までしか公開されておらず、また第三話以降を書いた小説版も在庫がなく入手困難。うーん、これぞ同人の一期一会感…。

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MYTH

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サークル「Circletempo」作品。同人ゲーム界隈では知らない者はいない埋もれた珠玉の作品。序盤の手探り状態からある時を境に反転する世界。突如として牙をむき、なだらかな日常すらも誰かの掌で踊っていることに気づくのです。複雑怪奇な多層構造。劇中における「虚構」と『真実』。膨大な情報量に圧死されながらも確かに受け取った、今を生きる人々への賛歌。

作中序盤から点在するあらゆる違和感へ漏れなく誘導させ、作中世界への考察を促す構造の巧みさは本当に素晴らしい。noteや登場人物の情報などを細かく更新する事で常に主人公視点と読者の理解度を測り、両者に乖離を生み出さない点も実に見事でした。

多くの名作ADVが生まれた昨今においても、ただ読むだけのものを「ゲーム」と呼称することに抵抗のある人もいるでしょう。けれど主人公と読み手の間の溝を埋め、物語へ介在し時に干渉する。そんなインタラクティヴに思考を発展させる「MYTH」とは、まぎれもなく「ゲーム」なのだと改めて感じました。

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頒布10周年を記念して製作された「MYTH -After the Stories」で作者があとがきで触れているように、本作は決して世界にその名を轟かすような作品とはなりませんでした。それでも、たとえアングラの域を出ないものであっても一部の熱狂的なファンを生み出した本作は誰かの心に確かな楔を打ったはず。個人的に残念だったのは、発表当時の狂騒で先人たちと一緒に踊ることができなかったこと。それだけは少し、悔しい。遅れて踏み出してしまった分どうしても後追いになるのは致し方ないところですが、こうした出会いを求めてこれからも「ノベルゲーム」を愛好してしようと思います。

 

デスゲームは始まらない

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「糸尾かしか」氏製作。フリーゲーム。どげざ2021作品。デスゲームがいつまで経っても始まらない。ようやく始まった!と思ったらやっぱり始まらない、タイトル通りデスゲームの皮を被った肩透かしコメディ全振り作品。これだけ書くと出オチ感満載ですが、流れるように笑いどころを挿し込んでくるところやUIが非常に秀逸なため読むことにまったくストレスを感じず飽きません。

作者のセンスが遺憾なく発揮された本作は、まぁ正直エッジすぎてついていけない部分(特に作中作、無駄にスタイリッシュなの、なんか悔しい)も多少ありましたが、最後まで軸がブレることなく突っ走ってくれたのは素直に称賛に値します。あとは何と言ってもポンコツ年齢不詳チョロイン金奈伊代(かねな いよ)がめちゃくちゃ可愛い。なんだこの欲望に忠実な生き物。札束に弱すぎる。あと爆発は正義。

 

マダム・ポプスキンの憂鬱

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サークル「TOTETIKE」作品。フリーゲーム。マダムからの依頼を解決すべく街を調査し真相を究明していくミステリーホラー。街を巡り情報を集める過程がとにかく楽しい。「Excellent」が出たときの満足感たるや。ユーザーに非常に優しく作られており特段考えなくとも効率よく進められるのがストレスフリーで良いですね。

真面目に脇目もふらず真相究明に躍起になるのもよし。調査を放棄して酒浸りになるもよし。ひたすら意味なくフラグの立ってない箇所で時間を潰すもよし。お遊びの差分テキストが結構用意されてるのも、この手のADVの魅力を押さえていて好印象でした。特にルネとの選択肢で探偵がおちょくって遊ぶの、好き。

 

ORDER

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「最中亜梨香」氏製作。フリーゲーム。どげざ2021作品。ギャングに両親を殺されたこと復讐心を胸に腐った国を立て直そうとする大統領と、彼に付き従うバリスタロボット兼国家管理システムAI「ジョー」とのSFディストピアノベル。簡素なイラスト・テキストによる分かりやすいポップさはそのシンプルさ故にやがて現実へと忍び寄ってきます

「国を善くしたい」というシンプルな願いを胸に改革に乗り出す大統領は、その願いを形にするため具体的な手段を「ジョー」を介して行います。「ジョー」はコーヒーを淹れながらその愛くるしい姿に相応しくあくまで無垢に「正義とは何か?」「良い未来とは?」と問いながらも指示に付き従い改革を手伝うのです

改革を断行しながらもやがて理念は変容していきます。その時「ジョー」は共に側にいるのでしょうか。その銃口は果たして誰に向くのでしょうか。

「皆さん、こんにちは。コーヒーはいかがですか?」

 

 

 

今月は短編を中心に効率よくこなした感。その中でも「MYTH」のような大作が一本入ると締りが良いと言いますか、緩さのなかに軸が生まれる気がして非常に達成感がありますね。やりたいものをその日の気分で片っ端から手をつけていく、という方法でこれまで楽しんできましたが、もう少し計画性をもって挑んでもいいかもしれません。