Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2022.12~2023.1

カナリヤです。日常報告シリーズ同人(一部商業)ゲーム編。

前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

新しい環境というのはいつまでたっても慣れないものですね。自身の順応性の低さが露呈しそのことに霹靂することももはや何度目か。こういう時こそ心の余裕を持たねば、と思う時点でそのような余裕はどんどん手からこぼれ落ちている、ということなのでしょう。

 

イハナシの魔女

fragaria.info

サークル「Fragaria」作品。沖縄離島ノベルADV。突如として沖縄の離島で生活する羽目になったメンタル強めの男の子と日本の常識が通じない謎の褐色美少女とが織りなす青春ラブコメ

簒奪された者同士が支え合う日々や夢を奪われようとする者に救いの手を差し伸べ、歪みきった自己肯定が安寧を取り戻す瞬間、運命に抗う青臭い少年少女たちの苦悩。清涼感のある直球の王道物語は終わってしまったという喪失感の度合いで価値が測れるというもの。惜しむようにおまけの設定資料を眺めては、物語への理解を深めようとしつつ「もっと触れたかったなぁ…」という思いは尽きませんね。

超大作だった前作「カガミハラ/ジャスティス」と比較すれば短いものの、あちらはいわゆる同人ノリが多めの構成だったことも鑑みればボーイミーツガールものとしてリズムよく読み進められたという意味では満足度は勝るとも劣りません。

リルゥ素敵。明可愛い。紬ずるい。妃里子良い子。兼城良い奴。光ようがんばった。

尺が短いとは言ったものの、登場人物たちすべてにきちんとスポットライトが当たっていたのはそれだけ構成が優れていたことの証左と言えます。これからも追わずには、期待せずにはいられないサークル「Fragaria」、発表したばかりでさすがに気が早い話ですが、次回作を今か今かとお待ちしております。

 

 

犬神使いと少年

ugainovel.web.fc2.com

サークル「活動漫画屋」作品。妖怪や民俗学を題材に「人間」の深層心理に迫っていくサスペンスもの。作中で出てくる犬神やコックリさんなどの怪異を逐次出典を示して丁寧に描写し現実に落とし込んでいくのは非常に読み応えがあります。

ただ丁寧に説明しすぎるせいでお話の流れが止まってしまい盛り上がりに欠けていたことは否めませんが、この構成であるが故の登場人物への解像度なのだと思いますし、中盤以降お話にグイグイ引き込まれた要因とも言えます。このわかりやすい「粗」は人によっては拒否反応を示すこともあるかもしれません。人を選ぶものの圧倒的な魅力を備えた作品、個人的には大満足の一品でございました。

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別記事ではありますが、数々の名作を落選させてまで本作を滑り込みで年間ベストとしたのはそういう部分も考慮した結果です。時にユーザーを置いてけぼりにするような作者の自己満足を思う存分ぶつけてほしい、そんな期待を僕は同人ゲームというジャンルに抱いているんだなと改めて実感しました。

 

 

ひとかた

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「お竜氏」制作。フリーゲーム陰陽師の血を引く主人公が片田舎の町に巣食う怪物「牛鬼」を倒すために奔走する現代伝奇ノベル。ふと気が乗って太古の同人ゲームに手を出してみました。さすがにキャラ設定やテキストにレトロ感がある点、立ち絵やCGなしと同人とはいえレベルの高くなっている現在において今やるにはなかなかハードルが高くなってはいますが、案外楽しめたと思います。

お話の肝となる、とある"真実"に関して当時は衝撃的だったのかもしれませんが、割と序盤からわかりやすい伏線をゴリゴリ張られてるので新鮮味に乏しいといいますか「まぁそうよね」という感じで軽く受け止めるに留まったのはどうか許していただきたい。逆を言えば、調理され尽くし新鮮味のなくなった現代において同様の手法を取る場合はそれこそユーザーに気付かせずに随所に伏線を張り巡らせていくのがいかに大変な作業なのか、ということなのでしょうね。

ただ当該人物が本人にとっては何よりも受け入れがたいその"真実"に対して作中を通して真摯に向き合い、迷いながらも最後には自らの意志で自身の結論を導き出す流れは、魅力的なお話に溢れた今であってもなお心に響きました。

 

 

大正浪漫ミステリー 石榴の時計

yukirins.perma.jp

サークル「YUIRINS」作品曰く付きの屋敷に仕組まれた謎と愛憎絡み合う運命を解明するため、英国人探偵とその助手見習いが奔走するお話。理屈っぽくシニカルな探偵・紫藤直樹と、その助手でとんちんかんなお嬢様・里穂子とがやいのやいの言いながら時に犯人にターゲットにされそうになる危険もありつつも、基本的には傍観者として事件を観測し、真相に迫っていく展開はまさに王道ミステリー。大正という時代設定も技術的な過渡期ということもあってそういった描写が随所で見られるのもいいですね。

僕自身意外ではありましたが、一般人が事件に巻き込まれ自衛のために自ら事件の解決を余儀なくされる、いわゆる「かまいたちの夜」のようなクローズドサークルのミステリーには割と触れていたものの、探偵が探偵として事件を解決していく王道なミステリーにはそこまで手を出してこなかったんですよね。自分自身に投影するのが容易な巻き込まれ型と比べるとお話に入り込むまで時間はかかりましたがひとつ、またひとつと事件が起こっていくなかでおぼろげだった事件の形が浮き彫りになっていくのは読み応えがありました。まぁ時代とかお話の流れで救いのない話になるだろうなぁとは予想していましたが、想像通り。でも後味は案外悪くありません。

あと八重が可愛い。

 

 

BLACK SHEEP TOWN

blacksheeptown.com

「BA-KU」作品。一つの都市を巡って紡がれるSFビジュアルノベル。まさかあの瀬戸口がギャングものを書くとは。OPのシーンはあからさまなゴッドファーザーオマージュでしたね。あとグループきっての使い手、みたいに言われながらあっさり退場した劉建志ってルカオマージュだよな?とかひとりで興奮してたりしました。

多種多様なキャラ達の信念と価値観が織りなす群像劇はそれが悲劇であれ喜劇であれ、いかなる結末を迎えようとも眺めることしかできない僕たちをひたすら揺さぶっては、忘れられないしこりを残していきます。

物語のジャンル的にも瀬戸口廉也という作家性からしても、内面に迫りながらも残酷に登場人物を必要以上に描写するのは目に見えていたことですし、それを読者も望んでいたことだと思います。ただ本作はこれまでの瀬戸口作品からすれば思いの外エンタメ方向に舵を切った感があります。あっけなく、容赦なく、理由もなく命を散らす者もいれば、明日を生きるために懸命に前を向く者もいる。作中のSF要素について曖昧なままにされている点は半端にも映りますが、横たわる絶望や事実だけではなく続いていく日常という要素を強調してくれたという点は、氏の新境地とも言えるのではないでしょうか。

「物語のおわり」を読み終わった後も、去りがたさからTIPSに隈なく目を通したり作品内の音楽を鑑賞したりと、しばらくの間終わってしまった事実を受け入れられずにいました。「思っていたほど瀬戸口してなかったな」という思いと「思う存分瀬戸口を堪能した」というごちゃごちゃした矛盾する感覚が去来する胸中。どうあれ穏やかに内面をえぐり出すことは変わらない瀬戸口廉也は、これからも僕の心を捉えて止まないのでしょう。ということで、「ヒラヒラヒヒル」、はよこい。

 

 

ある夏の日、山荘にて……

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「三谷はるか氏」制作。フリーゲームサウンドノベル形式の推理ゲーム。以前もやったことあるんですが、そういえば最初の解決エンドだけで満足してたことに今更気づきせっかくなのでコンプまで楽しむことに。「かまいたちの夜」リスペクトなだけにホラーやギャグなど様々なルートが楽しめる本作ですが、肝となるのは本編とも言える「首切りの館編」でしょう。総当たりでの解決を決して許さない梶浦というヒロイン()の圧倒的な存在感は一見の価値ありです。

たとえ間違った選択肢でもそれらしく犯人指摘まで辿り着いてしまうのが本作の実に丁寧かつ厄介なところ。提示された謎に四苦八苦し、苦し紛れに選択肢を選び、運良く推理が展開されたことで万事解決か…?と思いきや、満を持してその推理の瑕疵を時に嫌らしく時にねちっこく指摘してくる梶浦が清々しいやら憎たらしいやら…トリックを含めてユーザーが事件についてきちんと理解していないと犯人を選択してもその先で躓いてしまい追い詰め切れない、非常に良く出来た構成でした。

この手のジャンルにおいて、犯行の動機やトリックのインパクトが重視され推理要素がおざなりになってしまうケースはそれほど珍しくはありません。実際僕も「それは些か強引では…?」と思いながらも細かいことを気にせずに謎を解くカタルシスに酔いしれるなんてザラです。ですがこのゲームはそれを許しません。ミステリーというものに真剣に向き合い、少しの矛盾も見逃さず真実を追求する姿勢はこちらが根を上げてしまうほど。梶浦の追求を退け、一切の隙もなく謎を解明するこの快感、もしまだ味わっていない方がいましたら、DLだけでも是非。

…とは言え主人公VS梶浦にどれだけ尺使うのさ、とちょっと笑いましたけどね。

 

 

Silence of Switchblade-アーリーアクセス版-

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サークル「Summertime」作品。連続殺傷事件を発端に刑事と殺人犯のインモラルな三角関係を描くビジュアルノベル。登場人物たちの抱く閉塞感、停滞感。そこにリンクするように淡々と綴られる彼らの行き場のない吐露は、決して目を逸らせてはくれません。

badcatsweekly.com

本作は作者自身で言及されているように、往年の名作ドラマ「ケイゾク」を意識したような登場人物の造形や各々の関係性、特に作者がこだわったとされる映像演出や効果音は作者の狙い通りに機能している点は本当に素晴らしい。先の読めない展開と合わせて非常にモヤモヤした言語化できない感覚をもたらしてくれますし、「ケイゾク」好きな僕としては夢中で読み進めてしまいましたね。そしてこの感覚は作者の過去作品をプレイした際の類似点でもあり、そこに魅了された身としては出典が判明したことでより嗜好が刺激される次第。あぁ癖になる。

本作はあくまでアーリーアクセス版でありEDもひとつしか実装されておらず、完成版が待ち遠しい限りですがこの作者からしか味わえない独特の気持ち悪さ(褒め言葉)はこれだけでも十二分に堪能できます。とりあえず僕は目黒さんが好きです。プールサイド。

 

 

HoodMaker

www.hoodmakers.com

2022年に解散したサークル「HoodMakers」作品。何者かになりたかった一人の青年があやふやな"それ"を目指して努力して、挫折して、諦めて、「それでも」と立ち上がって自分自身を奮い立たせて、1日分の幸せを作りたいという願いを形にしていく自伝風物語。作者の心を、魂を感じられる一品。

正直言って評価が非常に難しい作品だと感じました。ギアがかかるまで時間を要する構成は明らかなマイナスですし、メッセージ性も作中で語られるように独りよがりと受け止められてもおかしくはありません。けれど作中で描写される現実を侵食してくる虚構の存在感、特にこのサークル自身との関連付けられた演出は僕の琴線に触れるものだったことは間違いありません。

関連作である、「~隣のレジの君~HoodMakers_Side_Story」「『IF』がユメであるように、夢がゆめであるように」も間髪入れずにプレイしましたが、ここで端的に描かれる登場人物たちの心の揺れ動きは非常に現実に即していて、創作に携わる人の苦悩と、それでも何かを表現せずにはいられない性がいっそ愛おしく思えてきます。

評価が難しいという感想も結局は僕が創作側の人間ではなく受け取る側の人間に過ぎない、ということも大きいのでしょう。本当の意味で彼らの苦悩は理解できないし、できたなどと宣うことは日々魂を削る彼らに対してあまりに不躾です。でもこの胸を締め付ける感情はきっと彼らの見る景色の一端なのだと思いたいです。サークルは残念ながら解散してしまったようですが、作者自身はゲーム制作を続ける意思があるとのこと。願わくはこれからも万人ではなくとも、誰かの心に刺さるゲームを発表してほしい。

 

 

同人ing

こちらも解散が発表されたサークル「星団ファミリー」作品。同人ノベルゲームの制作に青春をかける高校生達を描いたほぼほぼスポ根。創作の醍醐味や苦悩、そこに至るまでの道程を丁寧に、熱く、これでもかというくらいドラマチックに描写します。キャラの青臭さや御都合主義は多少大袈裟に映るものの、その熱には確かな説得力が宿っています。

主人公の挫折からの出会いと転機。仲間たちとの切磋琢磨、ライバル登場や"最凶の敵"という壁。王道展開を余すところなく詰め込んでくれてもなお、同人らしさを失わないのは同人という舞台の裏側まできちんと描写してくれていたからだと思うのです。

「ありがとう」という言葉がディスプレイに映るたびにまるで自分のことのように心が暖かくなります。設営のボランティアやレビュアーといった存在への描写の細かさは、これもまた創作というものへの愛の形なのでしょう。そういう微細な部分に宿るのだと思う。「熱」というものは。

創作って、物語っていいな。そう思えただけでもこの作品をやった価値がありました。僕はこうして消費するだけの矮小な人間で涙腺を緩ませることくらいしかできないけれど胸に抱いた満足感と感謝の気持ちがいつかどこかで、こうして提供してくれている彼らに還元されることがあればいいなと強く、強く思わずにはいられません。

良い作品をありがとうございました。そしてお疲れ様でした。あと僕は宮口が好きです。

 

 

蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2

aokana.net

「sprite」作品。みさきルートの後日談にしてメーカー曰く「正統続編」。本作が出るまでは紆余曲折あったようですが、こうして無事に僕を夢中にさせてくれたお話の続きを楽しむことができてひと安心。本編では実現しなかった真藤VS青柳部長などの対戦や演出面の強化は読んでいてめちゃくちゃ熱かったです。商業という舞台において妥協しない作品づくりを堪能できたのはまさしく僥倖。すっごい力入っててびっくりしました。「FILMIC NOVEL」は伊達じゃない。

一部登場しないキャラはいたものの後日談らしくお祭り感のある構成になっていましたし、白瀬兄妹など本編では描写不足だったサブキャラの掘り下げもされていて大満足のFDでございました。…欲を言えば霞と莉佳の絡みとか見たかったなーってくらい。

お話的にもみさきルートで描いてくれたスポーツの進化という部分に焦点を当てながらも、スポーツの負の部分にもしっかりと向き合い前を向いていく姿というのは実に清々しい。これぞスポ根。これぞ青春。

www.youtube.com

10000字の感想書くくらいには個人的に大好きな作品なので、マジでZWEI出てくれないかなー(チラチラ

mywaymylove00.hatenablog.com

 

 

2ヶ月分となるとさすがに多い(疲労)。まぁそれだけ作品を堪能できたということなのでしょうか。こうして記事にするのは自分で勝手にやってるだけなんですが、自分で自分の首を絞めないためにも定期的に吐き出していきたいところです。