Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2023.5

カナリヤです。日常報告シリーズ同人ゲーム編。今回は商業も含みます。

前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

春から夏に移り変わろうとしているからか、なかなか安定しない季節ですね。時にはあまりの暑さに5月だというのにクーラーをつけたり、その数日後には気温一桁台という寒さで毛布に包まる羽目になったり。地球さんはこちらの体調をおかしくさせる気満々のようです。

 

ハルカの国 ~大正決戦編~

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同人サークル「STUDIO・HOMMAGE」作品。国シリーズ最新作。全六作を予定している「ハルカの国」の四作目。終わってみて最初に感じたことは、とにかく良かったということ。我ながらあまりに単純すぎるその感想は流石にどうなの、と思わなくもありませんが過去作ほど怒涛の展開や時勢に振り回される描写が比較的少ないことも相まって、キャラクターの心情にフォーカスしたが故にしみじみとホッとしたという印象を抱いたのだと思います。

思えば第一作目「明治越冬編」のキャッチコピーは「強さは、私のものだった」というそれはそれは強烈なものでした。その大言壮語な謳い文句はあまりに純粋無垢な響きを持っていて僕は初見で心を鷲掴みにされたわけですが、それは決して僕だけではなくユーザーは漏れなく発した登場人物に対して直情的で視野が狭く、その強さという曖昧なものにしがみつくような余裕のなさすらも伺わせていたはず。四作目である本作では件の登場人物が過去三作での経験からの確かな成長をこれでもかというほどに見せつけてくれます。瞬間的な衝撃ではなくとも、蒔いた種からようやく実をつけ花開く様を特等席で観られたような。溢れ出る涙のような一過性のものではなく、心の奥底に留まってくれるかのような、そんなしみじみとした日常の温かさを抱くのです。

初めての「国」体験から早2年が経とうとしています。様々な作品がある中でこの「ハルカの国」では過去三作で泣かされ続けてきたわけですが、今作では不思議と涙の一滴も出ませんでした。むしろ登場人物たちのほうが号泣していたんじゃないでしょうか。日常を殊更有り難がるのではなく、それを自然に思うこと。どうやら僕にとって「ハルカの国」の価値はそうした何よりも大切なものと同種であるようです。

数多の出会いと別れを経て、寂しさとともに歩んだ道のりの果てに、強さに縋ったあの時の自分とあの時の自分が追い求めた強さの意味を知ります。魂を削る咆哮のような感情の発露は本人以外には拙く映るもの。だからこそそこに映るは彼らの自然体に他なりません。「強さは、私のものだった。」なるほど、では、今は? この感情の揺さぶりは百年を描くハルカの国シリーズだからこそ。次回はいつになるのでしょう。あぁ、待ちきれないな。

 

 

幻想のアヴァタール


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解散した同人サークル「べにたぬき」から2010年に発売されたビジュアルノベル。長野県に実際に伝わる紅葉伝説を軸とした伝奇バトルモノ。同人とは思えない非常に丁寧な作品でした。OPムービーや随所で見せる演出へのこだわり。各章の合間に用意された「Tea Break」、また右クリックでメニューを出す度に今喋っているキャラのSD絵が表示されたりとユーザーへのつぶさな配慮、芸の細かさには驚かされました。

ただ残念ながらその丁寧さが作品の根本的な面白さに直結したかと言われればなんとも微妙なところ。個人的に一番の問題点はヒロイン。これがもうびっくりするくらい合いませんでした。

怪異専門の探偵である主人公に父の不可解な死の調査と自身の警護を依頼しに来たヒロインは、主人公に自分では実力不足だとして素気なく依頼を断られたことに憤慨。あろうことか主人公宅から状況を打開する為の書物を盗み出しよく分からないまま式神を呼び出して対処しようとしますが、それが自身を付け狙う鬼達を刺激してしまい窮地に陥ります。運良く邂逅した主人公達に救出されるわけですが、その後も飽き足らず自ら問題を大きくしてはピンチに陥ったあげく主人公らに助けを求め、今度ばかりは流石に懲りたのか自身の言動に問題があったことを認め反省するものの、その舌の根も乾かぬ内にまた勝手にピンチに陥るヒロイン、というまるでコントのようなシーンが大真面目に描かれます。

またその厄介なヒロインを各キャラがことある毎に評価していることも意味不明で、終始感情移入が難しい作品となってしまったのは甚だ残念。なんでしたら終盤で敵がヒロインに対して「わがままで自分では何もできないお嬢様」と言い放った際は敵ながら「いいぞもっとやれ」と心の中で喝采を送ったくらい。

本作がこのヒロインを最後には人間的に成長させるような、成長物語としての作品として描き出したのであれば評価もだいぶ変わっていたでしょうが、残念ながらそんなことはなく。むしろ全く変わらない調子で最後まで突っ走るものだから本来なら各キャラのその後を楽しめるであろうエピローグもヒロイン視点での描写だったこともあり完全に蛇足となってしまいました。むしろ途中からはアカが名実共にヒロインしてました。コロコロと表情の変わる喰えない性格のアカ、可愛い。

ガワだけで言えば非常に完成度の高い作品でしたし、その点に関しては全く異論はありません。ただそれだけにもったいない。主要キャラ、もっと言えば物事の中心として描かれるキャラに対して納得できるアプローチが作品内で描かれなければ最終的な作品への評価には繋がらないんだな、と改めて感じた次第。ただヒロインが合わなかったとはいえここまでの作品を作り出せる同人サークルはそうはいません。聞くところによると本作の続編企画もあったとか。作中では明かされなかった要素も多々あっただけに解散してしまったのは残念でなりません。

 

 

パラノマサイト FILE23 本所七不思議


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呪いの力を得た9人の男女によるサスペンスホラーADV。蘇りの秘術を巡ってそれぞれの思惑が交錯するなか、登場人物の視点を変えながら複雑に絡まった真実が次々に明らかになっていくカタルシスは群像劇ならでは。

「呪い」というワードや劇中での凄惨な死体の描写などからホラー要素を全面に押し出した作品なのかと思えばそうでもなく。むしろ中盤以降は「呪い」のルールを理解したうえで状況を打破したり事件の背景を紐解く推理要素の方を強く感じました。

調査パートではパノラマを使った全天球背景の一人称視点を活かしてマウスで視点を変えながらユーザー自ら違和感を発見させるインタラクティブ性に富んだ構成となっています。コマンド選択式のインターフェースは往年のゲームシステムを思わせますが特に古さは感じさせず、それどころかテンポの良い会話やコロコロと変わる表情や絶えず変化する画角といった演出はどれもシームレスでスピード感があり夢中でプレイしてしまいました。

なにより登場人物たちが非常に魅力的で彼らの会話劇があまりにも楽しすぎたせいか調査パートでも無駄に話しかけてしまいましたね。中でもプロタンこと櫂利飛太(かい りひた)と彼の依頼者であるマダムこと志岐間春恵(しぎま はるえ)の噛み合ってるのか噛み合ってないのかよく分からない微妙な空気感が一番好き。テンションの高いプロタンのトリッキーな言動に対してマダムのまったく抑揚のない「まぁ・・・」で応える流れは一生眺められます。本来ならオマケ要素であるなめどり探しもくだらなすぎて全部探し出してしまいましたよ。

不満点を言えば思ったより短く感じてしまったことでしょうか。楽しすぎて時間を忘れて遊んだという側面はありますが、登場人物のなかにはそこまで出番に恵まれていなかったり全くいいところなく噛ませ犬で終わった人物もいたりともったいない印象がありましたし、また最終盤があっさりすぎてもうひと展開あってほしかったのは正直なところ。2000円足らずと激安と言っていい価格の本作にわがままだとは分かっているものの「もっともっと」と期待してしまうくらいには本作の出来はあまりに素晴らしかったのです。

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ただこちらのコラム記事を拝読して、先述の「あっさりすぎて」という感覚はこのゲームが僕の手を離れてしまった寂しさ故のものだったのかな、と感じもしました。作品のインタラクティブ性に魅力を覚え、それを殊更惜しむ瞬間は構造上どうあっても避けられないものだったはずです。であればこそ、この感覚は僕は本作をこれ以上ないくらい遊び倒した証左なのだと言えるのかもしれません。

「FILE 23」というタイトルから単発ではない、更なる続編展開も期待していいのでしょうか。スクエニさん、待ってますよ。

 

 

コルヌ・コピア~不思議の住む街~

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舞台はフランス。絵本作家を志す留学生コウタと人の姿をした『ふしぎけもの』達とのハートフルなお話。とりあえず公開されてるハティ編までプレイ。生き生きとしたキャラクター、行き届いたゲームシステム…え、なにこれ、無料なの?嘘でしょ?

まず気に入ったのはその空気感。実在の現地の画像を背景にしつつ異国文化に随所で触れている点も素晴らしいですが、なにより主要登場人物たちが良い意味で善人ばかりで彼らの会話シーンは終始穏やかで温かいのが特徴的。表情差分も豊富に用意されているからでしょうか、とにかく彼らをただただ眺めているだけで楽しいのですよ。一方劇中ではなかなか大事になる事件も少なくありませんし、登場人物たちが疑心暗鬼になったり険悪になることもしばしば。けれどそんな中でも常に誰かが誰かを思う気持ち故にこのような事態に陥っているのだと、存分に示してくれていることが本作の非常に心地よい雰囲気の醸成に一役買っているのだと思います。悪役でさえも憎みきれない、優しさで包み込んでくれるこの街の懐の深さはずっと浸っていたくなりますね。

その他、いつでも見返せる「章選択」や都度更新されるサイドストーリーの「小話」、作中で登場した用語を説明する「用語辞典」など、ユーザーが本作に思いを巡らす要素をふんだんに用意しているのもまた憎い。特に進行度で徐々に解除される「小話」は心温まるものもあればお話の裏側に迫る重要なものもあり、最後までその世界観にどっぷりハマることになります。まぁフルスクリーンにした後ウィンドウに切り替えられないとかバックログ表示が少々手間だとか、UIについては多少改善してほしい点もありますが、そんなものは重箱の隅をつつくようなものでして、終始滑らかに動作する本作においては微々たる不満点と言えます。

ここまででも相当の満足感なんですが、まだ2章も残してあるのが末恐ろしいですね。気になる伏線もまだまだ用意されていてこれからの展開が非常に楽しみ。ちなみに現時点では一番のお気に入りはハティ。なにこの可愛い生き物。僕、男性(雄?)キャラに「可愛い」という感情はあまり湧かないんですが、このハティくんについては別。大人ぶりたい背伸びがちな子が徐々に懐いてくるの、たまんない。
 
 
 
6月に入り、暑さが増してきました。ここから梅雨、そして夏と移ろっていくのでしょうか。半袖嫌いな僕としては果たしていつまで長袖でいられるか。ここからが正念場です。