Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2021.10

飽きもせずに日常報告シリーズ。前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

今日も今日とて同人ゲーム三昧。数が減らないどころかどんどん増えていく。おかしい。僕は真面目に消化していってるのに。一体誰だ。次から次へと僕の琴線に触れてくるような勧め方をしてくる人は…。

今月はとんでもない熱量を誇る一作と心の在り方をふっと楽にさせてくれる一作の二作品をプレイしました。ともに方向性は違えど”感情に訴えかけてくる”という点では共通しています。

 

虚構英雄ジンガイア

www.freem.ne.jp

「来い!ジンガイア!」

ヒーローに憧れてただ前だけを向いて走っていたその男は、いつしか自分では憧れていたたヒーローにはなれないのだと気がつきます。でもそんなちっぽけな自分であっても己が大切に思う存在くらいは救えるはず。絶望的な状況にあっても尚もがき苦しみ、いつまで経っても変わることのない現実を受け入れられません。それでもここで終えるわけには。この歩みを止めるわけにはいきません。何のために。何のためにこれだけの犠牲を払ってきたのか。己の持てるもの、金も時間も、全てはとうに費やしました。それでも届きはしません。他者の尊厳をこれでもかというくらいに踏みにじってきたのは。謗りを受けながらも省みることなくひた走ってきたのは。けれどそれでも届いてはくれないのです。全てはあの人のために。あの人さえ救えたら。他にはもうなにもいらない。それなのに。どうしたら。どうしたら救える?他に何を捨てればいい?何を傷つければいい?何でもいいから教えて。あの人を助けるにはどうすれば。お願いします、あの人を助けて。

サークルばかすか作品。四部作から成るこの英雄譚をプレイして「無力感」という言葉が何度脳裏を過ぎったことでしょうか。様々な人が多種多様な境遇の中で何かを為そうとします。皆何らかの矜持を胸に抱いて生きている。時にそれは眩しいものであり、時にそれは万人に受け入れられるものではないのかもしれません。在りたい自分と在れない自分とのギャップ。それを幾度となく画面越しに見せられる痛々しさはこの上なく哀れであり、滑稽であり、醜悪ですらあります。でも笑えはしません。こんなにも懸命に生きている彼らを笑うことなんて誰にも。

愚かで美しく、けれど等身大の彼らの行く末を、こう在りたいという確かなものを見つけた彼らの足掻きを、そして何よりここまで無様な姿ばかりを晒してきた彼の生きた証をこの目に焼き付けることができて本当に良かった。この冗長とも言えるような歩みは商業作品では味わうことができないものでしょう。これは紛うことなき「いつか”父親”になる物語」、その看板に偽りなし。

なお本作は日頃からお世話になっているフォロワーさんからデータを頂いたことでプレイできました。なんでも作者様公認でデータの譲渡を許可されているんだとか。作者様の豪気かつ粋な計らいとフォロワーさんの優しさにより本作を楽しむことができました。この場を借りて御礼申し上げます。

まきなさん、すげー楽しかったです。次回作も楽しみにしています。AさんBさん共々ご無理はなさらず。

たいきさん(@taiki_VA)、いつもガンガンお勧めを投げつけてくれて感謝。グレイメルカはようやく5章が終わりました。

 

親愛なる孤独と苦悩へ

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サークル楽想日作品。「心理学と人生のノベルゲーム」と銘打たれた本作は心理カウンセラーとの対話を通じて登場人物たちが自身の心と向き合い問題解決のプロセスを探っていく物語。徐々に伏線が解き明かさせていくようなお話の面白さは間違いないところなのですが、それ以前に本作で何度も登場する「観念」という考え方がなんとも印象的な作品でした。

「観念」、「ルール」とも言い換えられるそれはいつのまにか自身のなかで培われた物事に対する判断基準であったり、行動を決定づける一種の思い込みのこと。既に自身のなかで当たり前になってしまった感覚は平時であれば何も問題はないのかもしれません。「こうであるべき」という感性は行動自体に必要以上に意味を見出ださず常に最適化をしてくれるからです。しかしひとたび状況が悪化してしまっても変わらず機能する「こうあるべき」に知らず知らず振り回され自分自身を見失います。

カウンセラーである”まこちゃん”は「観念」によってがんじがらめになり身動きの取れなくなってしまった登場人物たちに「観念」が絶対のものではないこと、そしてその「観念」を持つに至ったきっかけを解きほぐしながら人生の生き方を模索していきます。

実は僕自身、ここ半年ほどで自分の人生について見つめ直す機会に恵まれ、まさに「観念」によって縛られながら生きていたことを思い知り、極力自身の「観念」的価値観に囚われすぎないように日々を過ごしていたこともあって、本作に登場するキャラクター達がどこか他人事には思えず、さながら一緒に心理学の講義を受けているかのような気持ちで一心不乱に読み進めていました。どこかの誰かに似てるな?

なので本作に関しては一種のライフハック本のような捉え方をしてしまっているのかもしれません。感情豊かな登場人物たちが自らと向き合い、徐々に自分というものを取り戻していく過程は本作が物語であることを忘れてしまうくらいに非常に興味深いものでした。

見つめ直したとはいえ、まだまだ僕も「観念」に振り回されることが多々あります。おそらくは一生付いてまわるものなのでしょう。そんな時は頭の中の”まこちゃん”に定期的に問い掛けてもらうことにします。今後の人生の指針を見つけた、という意味では大事な作品になったと思います。

 

今月はこんな感じでした。本当はここにグレイメルカも加えるはずだったんですが思いのほか時間がかかってしまった。久々にSRPGなんぞに手をだすからこうなる。でも楽しい。新たな扉をまた開けてしまった。それではまた。