Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2022.2

カナリヤです。日常報告シリーズ。前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

 

三寒四温ですね。最近暖かくなってきたなぁとか思ってたら吹雪に晒されたりしてるのでまだまだ油断ができません。まぁやることはあまり変わりませんが。

 

 

千里の棋譜


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ケムコとミスタ・ストーリーズとの共同作品。将棋界を舞台に巻き起こる2つの事件を奨励会三段棋士フリーライターが追っていく現代将棋ミステリーADV。将棋連盟全面協力のもと、実在人気棋士が登場したり詰め将棋のゲームコーナーがあったりするのが特徴。ミステリー部分に関してはやや強引でありながら二転三転する展開や昨今界隈にすっかり浸透した感のあるAI、彗星の如く現れた某若手棋士を彷彿とさせるキャラクターが登場したりときちんと現代に則した世界観に浸らせてくれるのが魅力ですが、本作は何と言っても盤面に向かう棋士達の苦悩や重圧を綿密に描き出すドラマ部分が素晴らしい。特に対局シーンをきちんと初手から描写し彼らの戦いの熱を視覚的にユーザーにまで届けてくる演出には本当に興奮しました。

これまでの将棋を扱った作品では尺の都合などで妙手や悪手など分かりやすい一部の描写のみに留まっていただけに、本作の淡々とではあるものの徐々に形勢が決していく対局の数々はまさしくADVというジャンルの強みを活かしたと言っていいものだと思います。勝者と敗者という事実を明白に晒け出していくその生々しくも静かな熱さは、向かいつつある終局を予感しクリックする手を止めてしまうほどに。彼らの物語ga密かに続編を期待しております。

 

結婚主義国家


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WaterPhoenix作品。18歳までに結婚できなければ処刑されてしまう架空の国家を舞台にした8つのお話からなる短編連作ノベル。本作は何と言っても構成が素晴らしい。荒唐無稽な設定を最初のお話である「独身監獄」において無慈悲に描写し作品世界における共通認識をユーザーに強烈に提示することで、ユーザーとこの世界に生きる人間との間に「結婚」に対する切迫感が共有されます。その緊張感をそのまま悲哀として演出したり、時にはコメディタッチに描き出すことで緩和を生み出したり。気持ちの切替が容易な短編集という媒体だからこそ雰囲気の異なるひとつひとつを余すところなく楽しめたと思います。過去作にはまだ手をつけていませんが、これからじっくりと。

 

If Found…


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辛い記憶となってしまった日記を自ら消しゴムで消していくことで進行するインタラクティブノベルゲーム。母親との不和、友情の軋む音、行き場のない自己。色彩豊かに描写される「彼女」の確立できないままの内面は、このまま消えてしまうようなおぼろげな筆致からなる繊細なアートワークも相まって、読んだ人の心を容易く刺激してしまいます。それはかつて過ぎ去ったものだったり、今なお続くもがきであったり。失って、得て、傷ついては、修復して。そうして最後にユーザーに構成させていく「自己」という演出は個人的体験も乗っかって非常に興味深いものでした。

 

インビジブル


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ルピナスパレット作品。フリーゲーム。都市伝説と異能が織り成す現代ファンタジー。それぞれに悩みを抱えたキャラクター達が出会い、成長していく中で真実に迫っていくお話はまさに王道といった展開で悪くはありませんが、いかんせん迫力不足が目立ちました。

巷で巻き起こる事件が都市伝説に端を発していることを強調し、その謎を追っていくことでお話が進んでいくわけですが、軸となるドッペルゲンガーが詳細に語られる程度で、都市伝説自体はさほど関わってこないのがなんとも肩透かし。異能を用いたバトルにしても演出に乏しくスピード感のない凡庸なものとなっている印象です。そういったなかで明らかになっていく登場人物たちの苦悩も、一部を除いてありきたりなものに終始していて特段驚く要素がないということも、本来であればユーザー目線での共感を呼べたはずのものが悪い方向に作用してしまったように感じます。

個人的にはひとつひとつの都市伝説と異能とをきちんと結び付けホラー要素を組み合わせていくようなお話をもっと展開できていれば、緊迫感をほどよく刺激してくれたのではないかと思いました。合わなかった、と言えばそれまでですが興味を惹かれる要素をいくつも持ち合わせていただけに少々残念ではありましたね。

 

さよなら、うつつ。

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羊おじさん倶楽部作品。薬物ヒーローADV。日常の世界における自身の"役割"に絶望し"主人公になること"を渇望する男が、薬物の力を借りて"救世主"と成り果て、そして幸福のまま終わっていく物語。

僕自身、自分のつまらない人間性を受け入れているが故に自分の置かれている状況を一足飛びでなんとかできる安易な手段に飛びつく、そんな青臭く浅はかな主人公には最初から一切共感できず物語を俯瞰することに終始していましたが、むしろそういう捉え方を作者側も推奨していたのかな、と感じたのは時々現れては意味のあるようでない(でもやっぱりある?いやないわ的な)発言を繰り返しては主人公とユーザーを混乱させていく「羊おじさん」という不気味な存在。このひと目でわかる近づいたらヤバい存在が定期的に現れてくれることで、僕らの「現実」と作品の「虚構」との乖離を促し、物語に過度に引き込まれることなく距離を保ったまま淡々と読み進められたのは、サイコな展開が続く本作においてはなんとも意外に思えました。

過去作でも感じたことではありますが、表面的には後味の悪さを演出することはあっても「幸福の追求」というテーマを最後まで見失わず絶望の中においても希望を見出だしていく方向性は非常に爽やかな読後感に繋がっています。同サークル作品「音無き世界その代わり」においてもペネロペやカナエが見せた憤りや決意という形でそれが顕著に示されており、決してサイコな部分だけにフォーカスすべきではないなと感じました。…なので過去作はこれからきっちりやっていきたいところではありますが、このサークルが心を抉られる展開を軸とするのは変わりませんので、タイミングはよくよく考えないと…。

 

 

今月はなんとなく同人ゲーをやるペースが落ちたように思います。面白いんだけど手が止まる。なんとなく気が乗らない。みたいな。と言いますか狂ったようにやってた以前がおかしかったとも言えますが。まぁ楽しむことがなにより肝要であって無理をしてでもやる、というのは目的と手段がごっちゃになっていて当たり前ですが良くはありませんね。