Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

最近あなたの暮らしはどう 2022.3~4

カナリヤです。日常報告シリーズ。前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

暖かくなってきていよいよ春本番というところでしょうか。うちのとこはこの前みぞれ降りましたけどね。

 

強盗、娼婦のヒモになる↑↓

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サークル「Loser/s」作品。金欲しさに強盗に入った青年が黒ストのお姉さんとひたすらイチャつくお話。トラ子がかわいい。

全体的な尺としては心理学の話やらその他雑学が占めていたはずですしシナリオ上でもそれが軸に据えられていたにもかかわらず、最終的には娼婦のトラ子とヒモの主人公との掛け合いがめっさ楽しくて終始ニヤニヤしてました、みたいな超絶頭の悪い感想に落ち着くの、不思議。

設定的にはだいぶ重めで登場人物たちも一筋縄ではいかない狂人たちばかりのはずなのに、このやたらポップな感じはなんなんでしょうね。作中曲のスタイリッシュさも雰囲気にマッチしていて短いながらも非常に満足度の高い作品でした。Dick。

 

マイナスエイヴ

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「流れ落ちる調べに乗せて」「闇を奔る刃の煌き」に引き続き同サークルの新作紙芝居シリーズに手を出してしまいました。

設定が大正時代だった前二作とは打って変わって、本作は城塞に囲まれた国家を舞台とする近世ハイファンタジー。ただこのサークルらしいダークな雰囲気は相変わらずで少年漫画ノリを軸としながらも随所で見せる意外性ある展開。そして圧巻の戦闘シーンは健在どころかより洗練されている印象。また本作は1話毎に起承転結がしっかりと構成されていて、かつ次回への伏線もきちんと張り巡らせているために非常に読み応えがあります。主人公の復讐譚から隣国との政争、果ては兄妹愛まで。さまざまな面白さを見せてくれるのも時間を忘れてプレイできる要因かと。

本作は只今6話まで無料公開中。完結までは早くとも数年はかかる見込みのようですが、作者様には頑張って完走してほしいところ。というかなんでこの出来でフリーゲームなんですか!ありがとうございます!!(錯乱)

 

幻想魔境奇譚


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新婚旅行中に事故に遭った男は最愛の妻とともに「稲妻型の痣」のある腕に嵐の海に突き落とされてしまう。

目覚めると男と妻は天国を思わせる無人島に辿り着いていた。そこで二人だけの幸福な暮らしを始めたその矢先にあっけなく妻を病気で失ってしまう。

絶望とともに海へと舟を漕ぎ出した男は一隻の船と考古学調査隊に奇跡的に出会い救出されるも、その隊の中に男を絶望に追いやった「稲妻型の痣」のある人物を見つける。

男は「人魚」を求めてやってきたという彼らとともに未開の島「ヤム・ラ・カヌ」へと足を踏み入れる。

復讐心を胸に秘めながら島に隠された謎に巻き込まれたひとりの男の数奇な運命を辿る物語。

なぜか唐突なあらすじ。本作の瑞々しく幻想的なタッチの絵と感性を刺激する文学的なテキスト、そして躍動感ある多彩なスチルとの相性は抜群。ただ巷で溢れるような分かりやすいキャッチコピーも、心踊る冒険譚も、もしかしたら本作にはないのかもしれません。夢中になって読み進めた僕としてもこの作品の魅力を万人に分かりやすく語ることはとても難しい。

妻への思慕以外の背景をなにひとつ知らない「ロビン」という仮称の男の一人称視点を貫く本作において、提示されるいくつもの謎はどれもこれも置き去りにされ生き生きと動く魅力的なキャラクター達にしてもこれ見よがしな言動の意味も最後まで明かされないままです。不親切で不器用で、それでいて随所で「ドグラ・マグラ」や「夢野久作」をここぞというタイミングで引用するなど読み手の心をあっさりとくすぐってくる構成はなんと言いますか、もう卑怯で狡猾。言ってしまえば単純に物語として魅力的なのです。

「稲妻型の痣の人物」へのただひとつの殺意を拠り所にしながら「生きる」ということに目を向けた男が、理解の範疇を超えた極限状態の中で次第に「生きたい」という欲求を見出だしていく様はひたすらに胸を打ちます。彼に訪れた不幸。彼の望外の僥倖。彼の思う幸福の定義。振り回された挙げ句に明らかになる彼を打ちのめすあっけないほどに単純なひとつの真実。彼の慟哭は、安易に理解を示すことすら侮辱に値してしまうことでしょう。

作中で遭遇する奇怪で荒唐無稽な現象を、「もしかしたらあるかもしれない」という確かな説得力を持たせて描き切った本作は、きっと10年後も名作と謳われていい。知名度には恵まれず、埋もれてもなお鈍く光を放ち続け、こうして僕に牙を突き付けてくる。同人ゲーというものの真髄を心行くまで味わってしまいました。

 

Her Story

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行方不明になった男性。その妻である女性に行われた7回にも及ぶ事情聴取。断片的かつ時系列もバラバラな映像を見ていくうち事件は明確に形を為していきその輪郭を浮き上がらせます。

ゲームを起動すると現れるデータベース。動画内に散りばめられたキーワードをプレイヤー自ら検索ボックスに入力しひとつひとつ映像にアクセスしていくのが非常に楽しい。キーワードを逐一メモし検索していく。データベースに侵入しているという設定のその背徳感も相まってか、ああでもないこうでもないと何度も何度も検索し、ようやくまだ見ぬ映像の断片を見つけだしたときの高揚感は格別です。動画もほとんどは1分程度の尺で長くて3、4分程度。ものによっては数秒程度というのもストレスフリーに仕上げてあって好印象。

ひたすら同じ画角の映像を調べていくだけなのに非常にインタラクティヴな印象を受けるのはビデオの中の女性の演技の自然さもさることながら欠けたピースを探し嵌めていく作業をプレイヤー自身に委ねているからでしょう。リプレイ性はなく真相自体も特段驚きはありませんが見せ方ひとつで魅力を生み出していく手法はお見事。

ちなみにこのゲームには明確なエンディングは存在しません。プレイヤーが身勝手に始めた捜査は、ここが終わりという明確な線引きを用意してはいません。事件の真相が何だったのか、それはすべて想像することしかできません。いつ終わらせるかは、いつ満足するのかはプレイヤー次第。曝け出した「彼女」をどのように受け止めるかも、プレイヤー自身に委ねています。これは彼女の物語。彼女はラプンツェルだったのか。それとも。そうやって余韻を残すのが、お伽話なのだから。

 

 

多少ペースは落ちたものの案外に数をこなしているはずなのに、消化不良な感覚が拭えないのは精神的なストレスと身体的な不調によるものでしょう。まぁ大仰に宣いはするもののその問題自体はいたって些末であるはずなのに、分かりやすいくらいに影響を受けてしまっている。弱いなぁ、と自らを恥じつつ、かといって逃れられるものでなし。せめて鬱屈とした事柄を一時でも忘れてられるくらい、「楽しい」という瞬間を積み重ねていきたいところ。