Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

thoroughly blue vol.9に5kaiを観に行って(精神的に)ぶん殴られた話。

カナリヤです。 去る10/8、宮城県は仙台のライブハウス「BARTAKE」で開催されたイベント"thoroughly blue vol.9"へ行ってきたのでそのライブレポをば。

キャパ100程度の小規模なステージは何年ぶりだろう。なんにせよライブにおける非日常という独特の熱気は変わらない。久しぶりのライブは単純に聴きに行くだけだというのにやはり緊張する。そして何と言っても初めてのライブハウスは勝手が分からず居心地の悪さも覚えてしまう。

開演30分ほど前に入場したが常連客もしくは友人達と連れ立って来る人が多いようで会場内は絶えず笑い声や再会を喜ぶ声が聞こえてくる。ぼっちの僕はいささか肩身の狭い思いをしたものの、ワンマンのようなこれから始まるライブへの期待感からの張り詰めたものではなく、どこか牧歌的な雰囲気を醸し出す空気は嫌いではなかった。転換BGMで54-71が流れた時はちょっとテンションが上ったものだ。

 

今回のお目当ては東京を拠点に活動するバンド「5kai(ゴカイ)」。


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5年ぶりに発表された2ndアルバム「行」は初めて聴いた瞬間身体が震えた。バンドサウンドの密度を売りとしながら音の空白が生まれることを厭わない彼らの音楽は空間を支配するような圧倒的な存在感を放っていた。そんな彼らを東京に行かずとも生で観られる。この千載一遇の機会を逃すわけにはいかなかった。

 

今回の出演バンドは5kaiと以下の4組。登場順に紹介する。

CULTE


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出演バンドの中では最も若手のシューゲイズバンド。イベントの開幕に相応しくミクスチャーを駆使した荒々しい音圧が非常に魅力的で、特に真ん中に陣取りえげつないテクニックで場を盛り上げたギターのメガネ君が素晴らしかった。次に登場するREEVESのボーカルをして「black midiのよう」と評していたのも納得。ちなみに僕は見た目も含め向井秀徳みたいだと思ってた。

 

REEVES


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仙台を中心に活動する4ピースバンド。メガネをかけた温和そうな御尊顔やその見た目通りの柔らかいMCからは想像できないVo.Gtダイキ氏のシャウトとファルセットの中間のような歌声は非常にキャッチー。初めて聴いても安心して聴ける楽曲の数々はおそらく各ライブでも重宝されているのではないか、と勝手に想像してみたり。

 

CONTRAIRE


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実験的な2ピースインストロックバンド。初見ということも手伝って彼らの自由な演奏スタイルには思わず「なんだこいつら?(褒め言葉)」と口から零れるほど。セッティング時点でなぜ真ん前にドラムが設置されたのか、と思っていたら案の定ギターを弾いていたOBT氏が次の曲ではタイトなドラムを披露したりとまさしく変幻自在。一曲一曲が割と長めで曲数は出演バンドの中では一番少なかったかもしれないが個人的に最も興味を引かれたバンドだった。

 

alvin


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今回のイベント企画者モトイ氏が在籍するポストハードコアバンド。全編を通じた絶妙な不協和音が聴いていて飽きない独特の面白さがある。ちなみに開演前に客同士が談笑していた模様は先述したが、僕の隣で楽しそうに笑っていた観客の一人がなんとモトイ氏本人で出番になった途端ギターを持ってステージに上がっていった時は大層びっくりした。心のなかで大阪弁のベタなツッコミをしてた。

 

各音源を聴いてもらえれば分かると思うが、すべてが違った魅力を有していて僕が知らなかっただけで世間にはこんなにも素晴らしいバンド達がいるのかと溜息が出た。しみじみと感じるとともに音楽がこんなにも世に溢れていることがなんだか嬉しかった。最後にライブに行ったのは去年のTHE SPELLBOUNDのツアーだったか。音楽がなくとも日常は続いていくし、生活はできる。それでも僕は必ずしも必要ではない存在のためにこうして赴いていく。およそ1年ぶりのライブは僕の耳を爆音で無遠慮に劈いてくれた。それがこんなにも心地よい。

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ただ僕の中で格の違いを見せつけてくれたのはなんといっても「5kai」だった。彼らを見に来ただけあってどうしても贔屓目で見てしまうのかもしれないが、今回のイベントにおけるトリを務めていたことや各バンドが5kaiについて何かしら言及していたことを鑑みても演者側をして特別な存在だったのだろうと思う。

初め、ライブハウスには牧歌的な空気が醸成されていたと述べたが、5kaiの演奏が始まるや否やその空気は良い意味で破壊されていった。

ツインドラムの構成となったのは2020年からだという。彼らの競い合いぶつかり合うソリッドなリズムに同調するかのように一気に張り詰めた空気が流れた。僕を含め、彼らの暴力的とも清廉とも取れる一音一音を聴き逃すまいとする聴衆が瞬く間に出来上がっていった。

流れるように刻一刻と確実に終わっていく楽曲を前にして、もしかしたらという思いに突き動かされた。もしかしたら、次彼らを観るのはここより遥かに大きなステージなのかもしれない。彼らの息遣いすらも聴こえてくるこの至近距離で、彼らの奏でる「祝詞」を聴けるのはこれが最後の機会かもしれない。

ライブにおいてはご法度な行為だと思うし、普段こんなことは決してしない。でも今はまだ発展途上であってくれる、手が届いてしまう彼らの現在を映像に収めたいという衝動には抗えなかった。彼らの凄さの一端が少しでも伝わるだろうか。僕が魅了された理由に少しでも共感してくれるだろうか。

 

熱病に冒されたまま帰路に着いた僕は今日を反芻するように撮ったばかりの動画で5kaiを聴く。今日という日を少しでも強く記憶するために。この熱が少しでも長く続いてくれるように。