Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

枯れたはずの目に涙が出て、捨てたはずの歌聞こえてるんだろう。

「WALKIN'ON THE SPIRAL」って曲が好きじゃないって話をする。

「WALKIN'ON THE SPIRAL」という曲がある。オルタナティヴ・ロックバンドの重鎮 the pillowsが2005年に発表したアルバム「GOOD DREAMS」の楽曲のひとつ。ド直球な気持ちいいギターリフで開幕するポップナンバー。個人的にはこのあたりの時期から確立されたと思うんだけど、彼らの代名詞"ヘッポコオルタナ”「Xavier」に続く「WALKIN'ON THE SPIRAL」はその後のシングル曲「その未来は今」への繋ぎとして絶妙な立ち位置にある曲だと思う。でもそれ以上の意味をこの曲に抱いてしまうのはピロウズにとって、バスターズにとって大事な、とても大事な映像作品に同名の名を冠しているからだ。

 

WALKIN’ ON THE SPIRAL [DVD]

WALKIN’ ON THE SPIRAL [DVD]

  • アーティスト:the pillows
  • 発売日: 2004/09/16
  • メディア: DVD
 

 

再生するとそこにはジャケットで見た通りの雲の海、「WALKIN' ON THE SPIRAL」のスカッとしたイントロに合わせて満を持して現れたのは、3匹のキリン。なんで?遥か上空に位置するはずの雲、その真下からジワジワととぼけた顔を出してきて、しばらくそのまま放置するとのんきな面を浮かべたままドラムに合わせてキョロキョロと首を振ってリズミカルに首が出たり入ったり。なんで?

 

このふざけたオープニングからなる映像はthe pillows結成15thアニバーサリー企画のひとつである「WALKIN' ON THE SPIRAL」この作品はそれまで断片的に語られるに過ぎなかったピロウズの軌跡を振り返り、その挫折、苦悩、期待と裏切りと、そしてその曇り空から覗いた鮮やかな景色ーー雨上がりに見た幻を当時を知る関係者や当時の貴重なライブ映像、そしてバンドメンバーのインタビューとともに描写するドキュメントDVDだ。

初代リーダー上田ケンヂと現リーダー山中さわおの確執。上田ケンヂ脱退後の方向性の模索。「Tiny Boat」における商業的失敗。周囲の反対を押しきって発表された「ストレンジカメレオン」

選ばれなかった、求められなかった。むしろ自らが掴み取ったことで築いていった彼らのごちゃ混ぜになったハイブリッドレインボウという軌跡は外から見るとまるでよくできたドラマみたいで、たとえ僕がピロウズという存在を知らなかったのだとしてもきっとどこかで彼らに触れ、そして今と同じように僕にふさわしい道を選んでいたんじゃないかとさえ思ってしまう。

 

「七回生まれ変わるなら、僕は七回ピロウズを目指す。」

親交のあるラジオパーソナリティである中村貴子氏が顔をほころばせながら発した「大好きなバンド」の言葉に呼応して「Can you feel!?」と駆け上がるようにシャウトする山中さわお。そのハイブリッドレインボウのライブシーンは今作のハイライトと言ってもいい。結成から30年以上経った今観てもなお、いやそれを踏まえて観る今だからこそその情景の美しさは僕を捉えて放さないのだろう。

「WALKIN' ON THE SPIRAL」はそういう意味を持つ言葉だ。単なるアルバム曲のひとつではない。その枠を超越したピロウズとバスターズにとってのあまりに深い意味を持つ共通言語になってしまったのだと、僕は思う。といってもべつにこの曲に限った話ではない。例えば「WE HAVE A THEME SONG」や「DEAD STOCK PARADISE」などのMV集作品にも同様に楽曲の名を冠しているようにこのバンドにとってはもはやお馴染みの手法であり、そこに特別な意味を見出だすことはやり過ぎなのかもしれない。歌詞に関連性はあってもお遊びのようにクスリとするくらいがちょうどいいのかもしれない。

でもあのスカッとした垢抜けたギターリフを聴く度に、三匹のキリンの映像が頭に浮かんでは思い出し破顔する、そしてあの悲痛な産声からなる彼らの素晴らしい半生が脳の端っこまで駆け巡る。

 

だから僕は 「WALKIN' ON THE SPIRAL」という曲が好きじゃない。曲を曲として正しく評価できない、させてくれない感傷を必要以上に引き出してしまうから。

 

コンスタントに200はすごいよね。