カナリヤです。さる5月25日仙台Rensaにて行われましたthe pillowsツアー「RETURN TO THIRD MOVEMENT! Vol.2」に行ってきましたのでそのレポです。レポという名の思い出語りです。
もうじき結成29年目のおっさんバンド「the pillows」が過去に発表したアルバムを再現するツアー「RETURN TO THIRD MOVEMENT! 」早くも第2弾です。
昨年の11月~12月に開催されたVol.1では「第3期」と呼ばれる時期の序盤、1997年発売の5thアルバム「Please Mr.Lostman」と1998年発売の6thアルバム「LITTLE BUSTERS」からの楽曲が披露されましたが、Vol.2の今回は1999年に発表された7thアルバム「RUNNERS HIGH」と8thアルバム「HAPPY BIVOUAC」からなる構成となります。
当時から好きだった人達も、後から好きになった人達も。あの時のあの曲を聴くための、そして開かない扉の前でそれでも歌い続けた彼らのためのツアー。
満を持して味わってきます。アウイエ!
以下はセトリ。全曲動画載せてます。正直やりすぎだと思う。
まずは「RUNNERS HIGH」から
1.Sad Sad Kiddie
だと思いました。1発目はこれ以外あり得ない。オルタナ色を前面に押し出した7th「RUNNERS HIGH」の1stトラックは中でも特にファズサウンドが強く5th「Please Mr.Lostman」の頃から音作りがだいぶ挑戦的。初めて聴いてから10年以上経った今でも、このアルバムを引っ張り出して初っ端でこの曲が流れてきた時のテンションは他と比較にならない、そのくらい大好きな曲です。
2.White Ash
解散してしまったけれどバンドWhite Ashの名前のもとになった曲。カバーもしてるんだぜ。このシンちゃんのスカッとする渇いたドラムを生で聴ける日がこようとは…!歪みきったギターとの対比が圧巻。アルバム本来の曲順とは違うけどアルバム間の差を、普遍的なロックサウンドからオルタナサウンドへの変容を実感するにはこの2曲の並びは非常にいいものだと思います。
MC
さわお「99年はアルバム2枚も出している。あの頃俺たちは、嘘みたいに元気だった!」
3.インスタント ミュージック
インスタントミュージック
世界中に溢れ
子供達は溺れてる
ダイエットミュージック
ほら夢中になって
くたばっちまえよ
中毒性・攻撃性に富んだ歌詞が非常に特徴的。そしてMAYA MAXXが強すぎる。pillowsがある種の代弁者!みたいな扱いを受けたのはこういう曲を書いてしまったからだよなぁと推察。けれどメッセージ性とかカウンターミュージックとかそういう堅苦しい感覚(いや間違いなく本心だろうけども)ではなくてシニカルを気取った上での遊び心といいますか。安全地帯からの悪口というか。あえての底意地の悪さというか。さわおさん性格悪いなぁ。
こういう曲を衒いなくシングルとして打ち出せることが、ドン底を抜けた当時のバンド状態の良さをうかがわせる1曲です。
4.Juliet
欲張って泣いてた
お気に入りのリザードの靴下を
破ったプレゼント
何も聞こえない雨の夜に
リッキーを内緒で連れ出した
これを聴けたことが今回一番嬉しかったかもしれません。歌詞もサウンドもすべてが直情的かつどことなくコミカルで、そして受け取る感情はもちろん明確な高揚。Bメロ後間奏のPeeちゃんのライブ感溢るる荒々しいギターソロを聴くたびに身体の疼きが止まらない。それはリアルでも同じだったんだ!
歌詞に出てくる「カナリヤ」は何気に僕の名前の由来の一つです。
キミの色で街中を塗りつぶせ。
5.NO SELF CONTROL
いらないぜ
窓の外に甘い実がなったって
もぎとって叩きつけた
NO SELF CONTROL
the pillows屈指の「アウイエー」ソング。そりゃあMCで本人が「アウイエー言い過ぎ!」と宣うわけです。
気怠げで孤独感に苛まれた歌詞とそれに同調する日常のようなメロディ。オルタナ色がにじみ出る祈りの曲。
そして目を開ければ、僕は僕といた。
MC
6.Midnight Down
世界を吹き飛ばして
自由だけを吸い込んだ
暗闇をくぐり抜けて
キミの顔しか見ないんだ
Midnight Down
暗闇でくすぶり続けていた時代を抜けて、ようやく今世界の希望を口にできる。そういう変遷を鑑みるとサビにおける爽快感が何よりも眩しく映ります。
これだけ良い曲で、後々ベスト盤にも収録されるほどなのにシングルですらないのはおかしいってずーっと言ってましたね。今はそういうもんだよと呑み込めます。
むかーし聞いた中村貴子さんのミュージックスクエアでの前フリで「Midnight Down」が言いにくいことをネタにしてたけど、だからかな。違うな。
7.Bran-new lovesong
文字通りのラブソング。ただ同じラブソングでも「パトリシア」「Ladybird girl 」などよりポップなものがライブ頻出なのでこのふわふわした女々しい歌は非常にレア。ライブでははじめて聴きました。
それはキミへのうたなんだ。
8.Borderline Case
夢を見たんだ
キミのこと
遠く近く感じてる
こちらもレア曲。CD音源ではまったく気づけてなかったんですが序盤のハイハットが結構面白いですね。
MC
9.Wake Up, Frenzy!
Wake Up, Frenzy
手放しで目眩いに
溺れていたいんだ
痛み出した日常を
ぎゅっと潰してくれ
メロウなリフの中に一瞬の空白。イントロの居場所なく漂うような雰囲気は非常に独特。サビは一転して突き抜けるような展開を見せ「Wake Up, Frenzy!」と強い調子で歌うも最後まで虚しさが耳に残ります。
後輩くんがこれ大好きって言ってたなー。ほかを差し置いても好き言ってたなー。
10.確かめに行こう
自分勝手で大人気なくて
気分次第で迷ってばかり
タチが悪いのはそんな時も
間違ったことを認めない
仲間といたって寂しくなる
優しくされたってまだ足りない
何もない夜は消えたくなる
僕のカタチがわかりますか?
刺さる。とにかく刺さる歌詞。抑揚のないメロディがそれに拍車をかけてますます刺さる5分間。シンクロするバスターズのなんと多いことか。最終盤の「とにかく前に進み続けるんだ」という思いはまさしく地べたを這いつくばって未来を掴み取ったpllowsそのものと言ってもいい。
いつから「stand by me」と歌うようになったのかな。
11.Paper Triangle
pillowsのインスト曲は数あれど、僕はやっぱりこれが好き。CD音源でしか聴いてなかった頃はどうやって音出してるのか不思議でしょうがなかった。ドライバーて。サビ直前にそのドライバーをスタッフに投げて寄こしたpeeちゃんが、そこから颯爽とギターをかき鳴らす姿がかっこよくて!ようやく生で観れました。
12.RUNNERS HIGH
言葉は不要。手を叩き、ひたすらタテにノリまくるがいい。
Dizzy my future
Silly my way
THANK YOU,BUSTERS!
MC
荒吐ロックフェスティバルの話。
なんでもストレイテナーとセッションしてテナーver.のRUNNERS HIGHを披露したとか。ぐぬぬ。
ここからは「HAPPY BIVOUAC」。アウイエ
13.HAPPY BIVOUAC
ここにある人生で
僕ら得た答えは
頂上なんてないんだ
Yes, ハッピービバーク
タイトル曲。楽しい野宿。ビバークというのは登山用語で本来緊急避難的な意味合いらしいのですが、このなんともヘッポコに思える響きは今のpillowsらしさの雛型と言ってもいいかもしれません。勢いそのままに製作された前作「RUNNERS HIGH」から少し立ち止まって、自分達の目指すものは何なのかという問いかけ。もう少ししたら頂上なのか?それって本当に頂上なのか?そもそも頂上ってなんなんだ?
どことなく張りつめたサウンドの多かった前作に比べて穏やかなディストーションが耳に心地良い。さわおさん、曲書いててすごく充実してたんだと思います。
よりオルタナサウンドへの追求が高まった今作からはサポートベースが鹿島達也氏から鈴木淳氏に。
14.Crazy Sunshine
Crazy Sunshine不機嫌な僕らの未来を照らしてよTightrope Dancing片足でも跳べる青い欲望にキミと火をつけて何も不安じゃない
フリクリの例のシーンの印象が強いかもしれません。やり取りも面白いし。
たとえどんな絶望的な状況だろうと、打席に立つんだったらバット振んなきゃ当たるもんも当たんないよ。
15.Advice
ある意味とてもさわおさんらしいtheロックンロールソング。「型にはめようとするな!」という非常に分かりやすい怒りを嵐のようなサウンドに乗せての発露。
この頃からまったく変わらないし、丸くもならないさわおさん。いつまでもそんな貴方であってほしい。
MC
16.カーニバル
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観覧車に独りで暮らしてる
大嫌いな世界を見下ろして
待ってたんだ キミと出会う日を
かしこまった日射しに こげながら
僕だけの窓を開いて 待ってたんだ
ここでこうなる日を
寂しげなイントロ。狂気のようなギターリフ。開き直るようなサウンドの変化も孤独という本質には何一つ供しません。「キミとキスして笑い転げる」という歌詞の後に響く渇いた笑いが脳髄に満ち満ちます。
MCにて、「自分で自分を褒めてやりたいくらい良い曲」。自身の音楽の嗜好がモッズやUKロックからUSロックへと移行するなかでオルタナというジャンルへの追求が加速していくpillows。決して大衆受けはしない彼らに心を揺さぶられた僕が、これからも彼らを好きでいようと決意させた、という意味で非常に価値のある曲です。
17.Our love and peace
こういうライブ向きではない曲を聴けるというのがこのツアーの醍醐味。
しかし上のアコースティックver.もそうですが、
こういう見事なアレンジをされるともはや原曲のイメージがすっぽり抜けてしまいますな。
MC
さわお「思う存分ウォウイエー言ってもらおうじゃないか!」
18.Back seat dog
バスターズ達によるリアルウォウイエーがこんなに楽しいものとは…!さわおさんの言う通り思う存分言ってやりましたよ。有名な話ですが、一応言っておきますとPixiesの「Here Comes Your Man」のオマージュです。
19.Kim deal
キミの孤独を見破れるのは
変な名前の占い師達じゃない
世界中探しても僕しかいない
わかってよダーリン
元Pixies、そしてThe Breedersのボーカル・ベースであるキム・ディールの名前を冠した曲。彼女への溢れんばかりの思いを綴った歌詞が印象的な可愛らしさと暖かさが同居する一方通行のラヴソング。
僕の涙を乾かせるのは、みんなの好きな“あの”下らない歌じゃない。
20.Funny Bunny
王様の声に逆らって
ばれちゃった夜キミは笑ってた
オーロラにさわれる丘の上
両手をのばして僕は誘っていた
こちらもオルタナ全開。そしてあえてあの歌詞を載せないという謎の抵抗。pillowsで一番の知名度を誇る曲。色んな人がカバーしてるから彼らのことは知らなくても曲だけ知ってるっていうパターンも多いんじゃないかしら。動画で察していただけるかは分かりませんが、僕はRock Stock ver.よりも原曲ver.が好きです。
もう記憶も朧気なんですが、だいぶ前に兄がこの曲をモチーフとしたライブTシャツを持っていてそこには例のサビを英訳した歌詞が載っていたんです。でもYour dreams come true~的な直球じゃなくて「あんたの夢はあんたにしか叶えられないんだから、誰かのせいにするんじゃねえ(意訳)」みたいな英詩が並んでてドキッとしたっていう。
MC
有江さんは遅刻魔。
21.RUSH
閉ざされた彼女のドアを
壊れる程 何度もノックした
こわがらないで
ほら キミは自由
このやまない雨に
濡れながら行こう
まさに曲名通りのたたみかけるようなド直球ファズサウンド。シングルなんだけどこれもあまりライブでは聴かなくなってしまったので嬉しい限り。
22.LAST DINOSAUR
悲しみを全部引き受けたって大丈夫
手加減なんていらない
どこでだって誰の前でだって
ただ自分でいたい
人呼んで「フリクリ次回予告」。エロゲ―マー的には「CARNIVALのOPじゃね?」。シンプルながら滑らかで抑え気味なディストーションギターとタイトなドラム、躍動するベースラインとまさに完璧と言っていいこの疾走感溢れるオルタナサウンドは、満場一致で、いや、もう誰が何と言おうと、アルバム「HAPPY BIVOUAC」のリードトラック。このかっこいい曲を酔っぱらった状態で思い付いて朝起きたら出来てたってエピソード、天才すぎて笑えません。アルバムのビバーク→ラッシュ→ダイナソーの流れと共に僕のテンションも徐々に上がっていくのがたまらないのです。
23.Beautiful morning with you
Beautiful morning with you
いつか わかりたいな
Beautiful morning with you
僕ら生まれて来た事
「HAPPY BIVOUAC」もいよいよ大詰め。リズムが途中で大胆に変わるのはダイナソーJrが元ネタだとか。
En
24.ガラテア
ライブ会場・通販限定シングル「ぼくのともだち」収録。pillowsには珍しい語り口調な新曲。
25.Nightmare
シングル「NO SELF CONTROL」収録。予想外過ぎてびっくりしました。
'Nightmare is great fun!'
MC
さわお「自分勝手にバンドをやってきた。流行りなんて気にせずやってきた。評論家なんて気にしない。表彰台なんて必要ない。でもこうやって19年も前の曲をキミたちがこうして聴きにきてくれる。それがもう立派な勲章をもらった気分だ」
En2
恒例のビールで乾杯。口がムズムズする話。
26.Coooming Sooon
直前でめちゃくちゃジーーンとくる話をしてたのに最後はヘッポコオルタナ(誉めてます)で締め。ちくしょー楽しいからいっか!
NOOK IN THE BRAIN
僕がpillowsファンであることを公言する際には(自称)古参バスターズと名乗っている。バスターズはpillowsファンの愛称みたいなもので古参っていうのもまぁなんだかんだ15年以上聴いてるし、とかそんな感じ。でも(自称)っていうのは謙遜でもウケを狙ってるわけでもなんでもなくて、単純にpillowsが今の音楽スタイルを確立した瞬間に居合わせることができなかったことに対する明確なコンプレックスの発露に他ならない。
Tiny Boatの商業的失敗を、反発から生まれたストレンジカメレオンの背景を、アルバム「LITTLE BUSTERS」がそれらを乗り越えて改めてリスナーへの感謝の念を込めていることも、僕は伝聞でしか知ることができなかった。そうした彼らの苦悩や葛藤が区切りを迎えた頃になってようやく僕は彼らを知った。知ってしまった。
生まれた時代を選ぶことはできないし、そのことを悲観しても意味のないことなんて分かっているけれど彼らを好きになればなるほど、心にポッカリ穴が開いたような、そんな無力感に苛まれた。僕にも彼らを支えてあげられれば、なんて大層なことを言うつもりはない。単純な話、すこしでも当事者意識を持ちたかったんだと思う。自分の問題のように感じたかったんだと思う。だから(自称)というのは、自嘲だ。そして少しの見栄だ。僕はその場に居合わせなかった。でもそのすぐ後から知ってるんだぜ?というひどく低俗な。
もちろん後追いファンが全てそうだと言うつもりはまったくない。僕個人がただただ残念でこれはもうどうしようもないことだと、頭の片隅に残る何かと付き合っていくしかないのだと。
「RETURN TO THIRD MOVEMENT! 」はそんな僕にとって明確な救いだった。あの頃の彼らに会える。あの頃の、まだ何者でもなかった彼らを思うことができる。
まったく同じではない。彼らは年を重ねて、僕もまた大人になってしまった。
だからこそ価値がある。19年前の彼らを思って拳を振り上げ、声を上げられることがこんなにも嬉しい。
長年のしこりが、ようやく取れた気分だ。