カナリヤです。10月13日東京都渋谷区は恵比寿にあるLIQUIDROOMにて行われた「木下理樹生誕祭2018~BAN NEN~」に行ってきました。行っちゃいました。40男の誕生日を祝うためだけにチケット代+往復新幹線代を支払って行ってきましたよ。
しかしたかだかひとりのミュージシャンの四十路を祝うためにライブハウスを貸し切りにするとはなんて剛毅な。そしてオールナイト。おぉぉぉ・・・(戸惑い)。僕としても久々の東京遠征しかもオールナイトなんて初めて。もしかしたら最初で最後の機会かもしれぬ、ということでいい歳した社会人が後先考えずに参戦です。
以下はライブレポ。木下理樹を祝いに駆けつけたゲストミュージシャン達の愛溢れるパフォーマンスと茶番劇。そしてART-SCHOOLはToddyことギター戸高氏による、この夜だけの特別なセトリが激しく火を噴くんだぜ。
- 開幕。彼奴のポンコツぶりは相も変わらず。
- トップバッターは13年来の親友フルカワユタカ。そのロックスターぶり
- 続いて髭・須藤寿。まさしく悪友
- 前二人に押され気味も確かな存在感。Ropes
- 間にRopesがいてよかったね。絶対いい人なメレンゲ・クボケンジ
- 選曲が悉くアートスクーラーたちの胸を抉る。DJ TOMMY
- いよいよ本命。ART-SCHOOLが登場
- 若者のすべて
開幕。彼奴のポンコツぶりは相も変わらず。
・開演時間となる0時半、今回の主賓である木下理樹が唐突に登場。相変わらずオーラなく、マイクの前にぬぼーっと立つ木下理樹。なにかしゃべり出すもゴニョゴニョボソボソオドオドとさっぱりわからない40歳。おそらくは「今日は僕のために来てくれてありがとう」的なことを言おうとしてるんだろうということでとりあえず皆優しく見守る。動物園かここは。
・そのまま締まらない挨拶が終わるのをしばし待ち最初に登場するであろう「ロックスター」こと元DOPING PANDAのフルカワユタカ氏を紹介したところでそそくさと掃けようとする木下理樹。そこにバースデーケーキを持ったフルカワユタカ氏が登場。ケーキはおそらくサプライズ。
・木下理樹、戸惑いつつもケーキのを受け取りロウソクの火を消す。その後このケーキどうすんの?と言わんばかりに一人テンパり、なぜかステージ機材の上にケーキを置いて退場しようとする木下理樹。それを止めるフルカワユタカ氏。
・すると戸高氏が登場し、ケーキを持つ木下理樹の動画撮影を試みる。それにぎこちない笑顔で応える木下理樹。ここでようやく「ハッピーバースデー」を歌い始めるフルカワユタカ氏。しかしケーキ登場時点でロウソクを消してしまったため、手持ち無沙汰のまま歌が終わるまでぎこちない笑顔を続ける木下理樹。
なにこのグダグダ。
トップバッターは13年来の親友フルカワユタカ。そのロックスターぶり
・出会った当時の尖っていた木下理樹
「彼はデビュー当時、和製カート・コバーンなんて呼ばれてましてね。本人も太く短く、という感じでしたけども、今は極細もいいとこ。27歳(←カートの没年)どころかもう40歳。カートより13年も多く生きてる。太く短くじゃなかったのか。恥ずかしくないのか!」
・ハードスケジュールもなんのその
「今日の昼は徳島でライブ。この後夕方は新木場でライブ。2日で3ステージってだいぶハードだけど、無理をしてでもこの生誕祭をぶち壊しにきたかった!」
・自身の思う木下理樹の良さ
「俺が木下を好きなのは、木下は森みたいで、その森を掻き分けていくと、トゲだらけだから手が傷だらけになるんだけど、その中にはとても綺麗な鏡があって、それを覗くと自分の醜さが浮き彫りになる。そんなところ。
・・・ちなみにこれは樹木希林さんが内田裕也さんのどこが好きかを聞かれたときのインタビューです」
・これからも木下理樹と
「出会って13年。多分これからもずっとそばにいると思う。50になっても。60になっても。年越しには毎年下北沢ガレージあたりで木下とSmells Like Teen Spiritを歌うような企画をしていくつもり」
・次に登場する髭・須藤に対して
「木下と僕の目の上のたんこぶ」
- シューティングゲーム
- バスストップ
- ロマネ(オリジナル:フジファブリック)
- the miracle(DOPING PANDA)
続いて髭・須藤寿。まさしく悪友
※サポートでギターを演奏するフルカワユタカ氏と須藤氏による内容のない茶番劇が5分ほど続く。
「みんなお酒飲んでる?じゃあ僕にも奢って。…そうしたら僕からはテキーラを奢ろう!」
・よくぞ言った
フルカワユタカ退場後、アコギ(フルカワユタカ氏の)のチューニング中、昨晩誰にでもは貸さないよ?と愚痴愚痴宣うフルカワユタカ氏を散々罵倒した後、続いてリッキーに対して一言。
「本人はサービスのつもりなんだろうけど、なんで喋れない人が開幕喋ろうとするのか、ほんとに疑問(会場、爆笑)」
・唐突に真面目な話
「ここにいる人達はみんな木下理樹を、ART-SCHOOLを好きな人達ばっかりでその感性は、絶対に間違いじゃない」
・最後に一言
「今日の(ART-SCHOOLの)セトリ見たけど、すっごい激しいよ。期待してて」
前二人に押され気味も確かな存在感。Ropes
・achico氏、挨拶
「木下理樹を好きな皆さん、木下理樹を愛してる皆さん、こんばんは。いい夜ですね、Ropesです」
・戸高氏、ボソッと一言
「(MCもそこそこに演奏しようとする自分たちとふざけまくってた前2人と比べて)オレらどえらい真面目だよな」
- Baby
- Draw
- yume
- dialogue
間にRopesがいてよかったね。絶対いい人なメレンゲ・クボケンジ
・木下に負けないくらい朴訥なクボ氏の見せた誠実さ
「こんな日にあれなんですけど、最近知ってる人が何人も亡くなってて…会いたいなって思ったら自分から会いに行かなきゃダメだなって。だから今日、来ました」
「こんな日は特別なことがしたいので、木下らしいこの曲をやります」
- 忘れ物
- 絵本
- OK & GO(オリジナル:ART-SCHOOL)
- 若者のすべて(オリジナル:フジファブリック)
選曲が悉くアートスクーラーたちの胸を抉る。DJ TOMMY
「今日ここに来れない木下理樹の友人の分まで曲を流して盛り上げていきたいと思います!」
いよいよ本命。ART-SCHOOLが登場
いつものようにAphex TwinのGirl / Boy Songの登場曲とともに、ART-SCHOOLの面々がお出まし。戸高氏はRopesに続いて2度目の登板。現在午前3時。がんばれ。僕も頑張るからマジがんばれ。
01.Touching Distance
02.Dreaming of you
9thフルアルバム「In Colors」収録。
まずは最新アルバムから2曲。戸高氏曰く「深夜の魔物にやられた」らしく、特にTouching Distanceの初っ端アルペジオめっさミスってました。
03.Promised Land
7thフルアルバム「YOU」収録。
木下理樹が深夜にもかかわらず声えらい出ててびっくりした。やればできんじゃん!
MC
なにか喋ろうとする木下理樹。「んぅー」という独特の咳ばらいで沸く会場。みんな木下理樹を甘やかしすぎている。
04.Supernova
8thフルアルバム「Hello darkness, my dear friend」収録。
05.フローズンガール
10thミニアルバム「The Alchemist」収録。
木下「いつかね、君と暮らしたアパートがね、思い出しますよ、雨が降ってね、真夜中の街をね、傘がないから走りましたよ!」
すげえ。ただ歌詞を言うなんて曲紹介は木下理樹にしかできない。一周回ったわ。
MC
木下「(唐突に)60歳くらいになってもこういう風にやれたらいいよねぇ」
戸高「・・・長生きしそうだよね、誰よりも」
06.CRYSTAL
6thフルアルバム「BABY ACID BABY」収録。
07.LOST CONTROL
5thフルアルバム「14SOULS」収録。
いまだにこのアルバムを聴いていない僕にとってはこのリフのグルングルンする感じがなかなかガツンときますな。前のワンマンでローラーコースター聴いた時もおんなじこと言ってた気がする。聴くよ。うん聴く。多分pillowsの新譜の後くらいに・・・。
08.アダージョ
4thフルアルバム「Flora」収録。
大好きなアルバムから大好きな曲が。ひゃっほい。この心に収まりの良い美しさが素晴らしい。聴けてよかった。
MC
※ここで観客にもサプライズプレゼントが。木下理樹が任意で引いたライブの半券番号の人にステージ上でプレゼントを贈るというもの。僕は外れました。ちなみにその内容は
1.木下理樹サイン入りクッション(楽屋で微妙にかわいいと評判に)
2.Nirvana風タオル(「NO ALCOHOL」とパチモンっぽい綴り)
戸高「(木下に)今持ってるフライングVとかあげればいいじゃん」
木下、(おそらくは買ったばかりなので)本気で嫌がる。
戸高「なんでそこで嫌がるの」
09.Nowhere land
4thフルアルバム「Flora」収録。
本日のファンク枠。原曲は軽快なシンセがウリでしたがライブver.だとそのシンセがない分、藤田さんのドラムの音がひと際響いてだいぶラフな感じに。
10.それは愛じゃない
コンピレーション・アルバム「Missing」及びB-sideベストアルバム「Cemetery Gates」収録。
これは珍しい!ファン歴の浅い僕でもわかる。客席もだいぶ沸いてましたよ。この優美さと穏やかさを兼ね備えた綺麗なギターフレーズに木下理樹のファルセットの混ざり合いが絶妙すぎて。これを名曲を言わず何と言う。
11.LITTLE HELL IN BOY
6thシングル「あと10秒で」及びB-sideベストアルバム「Cemetery Gates」収録。
はい、素晴らしい(語彙力)。トレモロ奏法の哀愁と「愛されるなんて」の歌詞の連動性がたまりません。これも好きだわー。今日のセトリは最高だぜトディ!
12.刺青
3rdフルアルバム「PARADISE LOST」及びコンピレーション・アルバム「Missing」収録。
これも好きなんだよ・・・(しみじみと)。アートの楽曲の中でも特にギターサウンドが群を抜いて豊富で、ディレイギターやブリッジミュートの静寂さからのサビでの解放感は、もういいから聴けって感じです(語彙力)。これはセトリを決定した戸高氏の良い意味での職権乱用だと思います。
13.スカーレット
3rdフルアルバム「PARADISE LOST」及びコンピレーション・アルバム「Missing」収録。
定番曲。
14.UNDER MY SKIN
2ndフルアルバム「LOVE/HATE」収録。
開幕フィードバッグノイズとイントロのベースラインが流れた瞬間、隣の男性から野太い歓声が。わかるわかる。キミがあげてなかったら僕がやってた。つかみんなやってた。
4thシングル「SWAN SONG」収録。
おぉーーい!トディ最高かよ!!!(興奮)B面集にも収録されてないレア曲がまさかの登場。このゴリゴリでひたすらに突っ走る無骨さが素敵。ちなみにこのあたりでようやく気付いたんだけど徐々に曲が古くなってるっていうね(遅い)。
16.ジェニファー'88
2ndフルアルバム「LOVE/HATE」収録。
定番曲。
17.アイリス
1stフルアルバム「REQUIEM FOR INNOCENCE」収録。
とうとう1stまできましたよ。そしてその中から特にキャッチーなこの曲が。初期アートのイメージの構築に一役買っただけあってさすがの疾走感。始まりから終わりまで延々と続く直線的な軌道に寂しげなアルペジオ演出が憎いね。これも生で聴きたかったのだぜ。ババスワイリス!
18.レモン
2ndシングル「DIVA」及びB-sideベストアルバム「Cemetery Gates」収録。
キラキラギターに退廃的な歌詞が自然に乗ってる感じ。いいねぇ初期アート。これだけでアートがとても厄介なバンドだと分かるってもんだ。
MC
戸高「(木下に)もっとちゃんと(観客に)お礼言った方がいい」
木下「見ての通りもうボロボロなんだよ」
戸高「なんで40の誕生日にそんな魂削ってんの」
木下「・・・でも、それでこそART-SCHOOLだよな!(ドヤァ)」
戸高「でたー(呆れ)」
19.シャーロット
3rdミニアルバム「シャーロット.e.p」及び1stフルアルバム「REQUIEM FOR INNOCENCE」収録。
きたーーーーーーーー!!!!!!!(しっとり曲だから無言で両手ガッツポーズ)初期の最高傑作がここで。単調ながら柔らかなサウンド、沈み込むようなタムドラム、木下理樹の美しくも悲痛に響き渡る歌声。木下理樹の詩的世界観が見事に結実した名曲です。聴けたぜー(陶酔)。
MC
※ここでサポートベースを務める中尾憲太郎氏、急に退出。
木下曰く、次曲に行こうとする木下の肩を中尾氏が掴み、強めの「ちょっと待ってもらっていい!?」
中尾氏の帰還を待ちつつしばし談笑。
戸高「どうした?(木下理樹に)とうとう耐えられなくなった?」
戸高「急に(木下理樹が)嫌になった?」
※ちなみに中尾氏の退出理由は前曲「シャーロット」が動きのないしっとりとした曲だったためか空調がモロに当たってお腹を冷やしたからだとか。照れながら説明する中尾憲太郎44歳かわいい。
20.MISS WORLD
1stシングル「MISS WORLD」収録。
定番曲。原曲では「君が失くしたら」の歌詞がライブでは「君を失くしたら」に変わるんですが、この日はなぜか原曲準拠。なんだろう、気まぐれ?
※先の件からすっきりした中尾憲太郎44歳のダイナミックなパワープレイに人知れず腹を抱えて爆笑するカナリヤ。
21.ロリータキルズミー
定番曲。
MC
戸高「次からはSONIC DEAD KIDSという古いアルバムから3曲続きます」
22.Sandy Driver
1stミニアルバム「SONIC DEAD KIDS」収録。
おぉー。この曲が生で聴けるとは。ほんとに貴重だよ今日は!心なし戸高氏が楽しそうに弾いてるのが印象的だったんだよなぁ。そういえば発表当時戸高氏はアートのいちファンでしかなかったわけで、戸高氏にとっては感慨深いのかも。終盤の「ナーナーナーナナナナナナナーナー」の馬鹿っぽさが楽しい。
23.NEGATIVE
同じく1stミニアルバム「SONIC DEAD KIDS」収録。
定番曲。これも生で聴きたかった!
MC
戸高「(木下に)次の曲は自分に向けて歌ってください」
(リッキー、なにかを言いかけるも戸高氏のイントロでかき消える。ひどい)
24.斜陽
(4分20秒あたりから)
同じく1stミニアルバム「SONIC DEAD KIDS」収録。
定番曲、というか多分もうそういう括りが相応しくないくらい木下理樹にとって、ART-SCHOOLにとっての大事な曲。レアな曲。大好きな曲はたくさんあれど、節目節目で演奏されるこの曲をこの日この時この場所で聴けたことが僕は一番嬉しかった。
EN
木下「(見るからにヘトヘトな自分を鑑みて)もうオールナイトはやりません。だから最後はエモく終わらせてくれー(疲)」
25.FADE TO BLACK
3rdミニアルバム「シャーロット.e.p」収録。
定番曲。やっぱり最後はこれだね。以上25曲。ワンマン並みじゃないか。時刻は午前5時。おめでとう&ありがとう&お疲れ。木下理樹。戸高氏。サポートの中尾憲太郎氏。藤田勇氏。そしてフラッフラのアートスクーラー達。
若者のすべて
話は全く変わるんですが、「ロックの学園」って知ってますかね?廃校になった学校を舞台に行われてたイベントで、出演するアーティストは「教諭」、来場者は「生徒」と呼んで「体育館ライブ」や「ロックの授業」をやるわけですよ。
僕はそのイベントに行ってないんですが、その模様がTV番組として流れてるのを偶然目にしたんですよね。その中で特に印象的だったのが怒髪天・増子直純氏によるロックの授業:倫理社会「ロックでないヤツぁロクでナシ」でした。
授業では抜き打ちテストとして「どっちがロックだ? 50 問」を実施。これは増子氏が考案したオリジナル問題で、2択の中で、どちらがロック度が高いかを選択する形式。
例えば、学校・職場編の問題では、「遅刻」or「ズル休み」ではどちらがロックか?これは「遅刻」が正解。なぜなら遅刻すれば怒られる、怒られないようにドキドキしながら走る、その行為に「ロック」があるという。
こんな調子で笑いに包まれながら授業が進んでいき、いよいよ最後の出題。「生きる」or「死ぬ」はどっちがロックか?正解は「生きる」。
増子「生き続けている限り、ロックなことに出会える。とにかく生きる。生きていただきたい」
迷うことなく「生きることこそがロック」だと言い切る、増子氏のそのキッパリした物言いが妙に心に残ったんですよね。
今回の「木下理樹生誕祭2018~BAN NEN~」では木下理樹との付き合いの長い友人たちが故人であるフジファブリック・志村正彦氏について言及していました。
フルカワ「志村もこの場に来たかったと思うんですよ」
クボ「リッキーと仲よくなったのも、志村が巡り合わせてくれたような感じでもあるので」
同時期に活躍した戦友の突然の死ってやっぱり相当ショックだったんでしょうし、言わずにはいられなかったんでしょうね。なによりもおんなじような雰囲気を醸し出す木下理樹のことならなおのこと。
遅ればせながらアートにハマった僕が今回のイベントに参加して、そして彼らの話を聞いてしみじみと思ったのは、木下理樹が極細でも生きててくれてよかったなぁって。くっさいけどさ。アートを知って、その時にはもう亡くなってたんだぜ。伝説になってたんだぜ。まさに和製カート・コバーンだぜ。ってそんなの悲しすぎるじゃないですか。極細だろうがなんだろうが、生き汚く抗ってることになんかホッとしてる。
長生きしろよ、リッキー。あんたのその己を曝し続ける姿を死ぬまで見せてくれ。愛してるぜ。
ちなみに会場を後にするファンたちにDJ TOMMYが木下理樹ソロ時代の曲「グロリア」を流す粋な計らいをしてくれたのイカスわぁ。最後まで良い仕事したぜトミー。そすいすい。
というかソロ音源再販しろや木下理樹ゴラァァ