Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

とりあえずナンバリング3作品プレイした上で「アイキス」へのモヤモヤした愚痴

カナリヤです。今回は「アイキス」について愚痴ります。普段の日常報告シリーズのまとめではなく個別タイトルで書くのは久しぶりですが、それが愚痴愚痴言う記事になるとは思いもしませんでした。燻った気持ちは別で処理したいなって。

作品の致命的なネタバレは書いていませんが、作品構成については触れていますので気になる方はスルー推奨です。


www.youtube.com

解散したエロゲメーカー「戯画」が送る「キスシリーズ」最終作。ナンバリングが付いてるのはシリーズ初。初期のキスシリーズ「キスアト」と同じ有杜美術学園が舞台となる作品。時折「キスアト」の登場人物がカメオ出演したり、どのルートが正史なのか明言はされていませんが主人公やヒロインのその後が匂わされていたりするのは、「キスアト」を楽しんだいちプレイヤーとして嬉しかったりしました。ちなみに僕はアリサが好きデス。

先述の通り本作は1作では完結しておらず3作目まで出ていますが、ナンバリングが上がるごとに主人公世代の学年も上がっていき、ヒロインも増えていきます。サブヒロイン含めれば最終的には11人に上りますね。

3作品からなる「アイキス」はどこからでも楽しめることを謳い文句としており、とりあえず順番通りに1年生の「1」から始めるも良し、後輩が入学して来る2年生の「2」から始めるも良し、そろそろ進路を決めなければならない3年生の「3」から始めるも良し。僕は後輩ヒロインの七瀬がドンピシャだったので「2」から始めましたが、はじめに「1」の共通ルートをまるごと読むか、チュートリアル的に共通ルートを簡易的にまとめたプロローグを見るかを選ばせてくれるので「1」を遊んでいなくともお話を楽しむのに支障はありませんでした。

問題なのは最終的に「3」をやってくださいね、とでも言わんばかりに「1」「2」の各ルートがどれも中途半端な終わり方になっている点です。


www.youtube.com

冒頭でも少し触れましたが、僕結構「キスアト」が好きだったんですよ。ヒロインは4名と多からず少なからずですが各ルートのテキスト量は比較的短く、軋轢やすれ違いといったシリアスな展開もそこまでない平坦な構成。それだけ言うとマイナスに聞こえますがその分プレイするのに抵抗感のない取っつきやすさはプラスだと感じていて、キャラ同士の現実味あるウィットに富んだ掛け合い、その軽妙さに呼応した各登場人物の魅力がぎゅっと凝縮された構成が非常に気に入ってまして、過去何回かプレイし直すくらいには好きだったりします。

本作も「キスアト」とはライターは違えど(なんかテキストから滲み出る雰囲気そっくりだけどいろいろあったみたいなので同じ名義で出しちゃうとアレだなという大人判断なのかとりあえず名前は違うし別人って事で)主人公と幼馴染みの三枝姉妹との距離感のバグったやり取りや姉妹との仲良しぶりを見て「え、これでどっちかと付き合ってないの?」という周囲の戸惑いに代表される登場人物たちのやり取りは「キスアト」より幾分アクは強いものの割と楽しんで読みましたし、美術系学園が舞台ということもあって主人公含め登場人物たちが随所で見せる自身の作品や物作りへのこだわりは真剣さがあり、そしてそれを今後仕事にすることの難しさや改めて将来の進路に苦悩したりする雰囲気などは「キスアト」ではそこまで言及されていなかったので同じ世界観でも違った側面を見られたという意味で全体的に嫌いじゃないです。

ただ「キスアト」では各ルートは短くともきちんと主人公自身やヒロインの将来を描ききっているのに対して、少なくとも「アイキス」の「1」「2」ではその後の展望などが曖昧のまま終わってしまいます。


www.youtube.com

例えば、ぱっと見お気に入りだった七瀬ルート。ヒロインの七瀬はデザイン会社の社長を務める母に幼少の頃からデザインのいろはを叩き込まれ周囲からもその才能を評価されているものの結局はやらされているだけのデザインという分野にそこまで執着を見出だせずにいます。家業を継がせようとする母とは価値観の違いから衝突を繰り返しますが、分け隔てない優しさを持つ主人公との出会い、そして主人公が絵画という分野に苦悩しながらも純粋に書きたいという気持ちから努力する姿に触発されたのか、徐々に気持ちに余裕が生まれていきます。これから彼女は母やデザインとどう向き合っていくのでしょうか。いよいよ終盤に向かうであろう七瀬ルートは主人公に絵を教えてもらう日常描写のスチルにENDという文字が映ったところで唐突に終わりを迎えます。待て待て待て。

残念ながら別にこれは七瀬ルートに限った話ではありません。「1」「2」は全員そんな感じです。もっと言えば「2」では関係性が物語開始時点まで巻き戻り、各ルートは結局中途半端な終わり方のまま。いやせめてafterとかで「1」のヒロインとのその後は描いてくれないのかと。

ナンバリング最終作である「3」では「1」のヒロインと付き合ったのが「1」時点なのか「2」時点なのか選択できるようになっていたりと一見嬉しい仕様かと思ったら話の全体像としてそこまで違いは見られず、ちょっとした会話に変化があるだけ。最終作だけあって一応は各ヒロインとの将来の道程を描くものの、果たして3作にする必要があったのか?と思わずにはいられない見事なまでの先延ばし感。そして先延ばしした結果、初見ではあんなにも魅力的だった物語序盤で見せる幼馴染みの三枝姉妹とのバグった距離感の掛け合いを、学年が変わって登場人物が増える度に繰り返し見せられるのはキャラのアクの強さがもう油っぽく感じられてしまいいくらなんでも食傷気味でした。

僕はそこまで分割商法やFDでの補完に抵抗はありませんが、それはあくまで1作品がきちんと完結された上で"それでもあえて"その続きを描くのであれば、という納得性がきちんと担保されているという前提があってこそだと気づきました。キャラ同士の掛け合いは悪くなかったとはいえ、物語の終着点がいつまでも見えず、メーカーによる作品の寿命を延ばそうとする牛歩戦術はその狙いが透けて見えてしまえば途端に興味感心が薄まります。「どこからでも楽しめる」という謳い文句を掲げているのであればなおさらです。3作品をプレイして決して面白くなかったとは言いませんが、それよりも作品構成への不信感が勝った、なんともモヤモヤ感の残る作品でした。

 

 


www.youtube.com

おそらくシリーズの精神的続編と言える作品がシリーズ化されているみたいですが、しばらくは様子見ということで。