Nothing is difficult to those who have the will.

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

彼らは、今が最高にかっこいい。THE NOVEMBERS 2022 TOUR - 歓喜天 - at the 仙台 Rensa の感想を書いてみる。

その日はあいにくの雨模様だった。

雨は嫌いだ。雨はいつだって僕を憂鬱な気分にさせる。

しとしとと緩やかに濡らしていく雨音は心地好くもあるが、ざあざあと降りしきるとさすがに騒がしい。そして総じて、湿気というのはこの上なく煩わしい。

雨が気分を高揚させたことなど、過去に面倒な学校行事が中止になったときくらいではないか。しかしそれを雨の恩恵と捉えるのは些か後ろ向きすぎるし、社会に出てしまえば多少の雨だろうがなんだろうが関係なく赴かなければならない場面など多々出てくる。

今日も今日とて雨への有効な対処療法を見出だせないまま、子供の頃から大して成長しているとは思えない頭と心で、あの頃と変わらない雨空を眺めているにもかかわらず、不思議と僕の気分は悪くないのだった。それどころか「いい天気だな」などと思ってしまうくらいには僕の心は落ち着いていたのだ。

聞くところによると、彼らのライブの日は決まって雨が降るのだという。メンバーの誰かが筋金入りの雨男であろうことは物販に雨着が用意されていることからも伺える。

憂鬱な気分を吹き飛ばすのは決まって、それをいとも介さないほどの特別な何かだ。この日が来ることを今か今かと待ち望んでいた僕にとって、これほど相応しい天気はないだろう。

前置きが長くなったが、それだけ感慨深いものがあったのだ。僕の初参戦となるTHE NOVEMBERSのワンマンはこうして幕を開けた。

 
かんぎ‐てん〔クワンギ‐〕【歓喜天

もとインド神話の魔王で、のち仏教にとり入れられたもの。 単身像と双身像とあり、双身像は、男神と女神とが抱擁する姿をとることが多い。 夫婦和合・子宝の神として信仰される。 大聖歓喜自在

コトバンクより。

ツアータイトルに冠された歓喜天とは、互いに抱き合う愛の守護神のこと。およそ3年ぶりに開催された全国ツアーは僕らファンだけでなくメンバーからしても待ちに待った再会の場でもある。そのことをたった3文字で、そして仏教からの引用というのも日本語の美しさを追求してきたTHE NOVEMBERSらしい表現だと感じた。

ライブの開幕はまさかの「ANGELS」。僕の狭量なノベンバ感を一新してくれた、僕にとって思い出深い今でも最高に大好きな曲。いきなりアコースティックにサビを歌い上げるアレンジには意表を突かれたが、フロア中に木霊する美しいメロディーと高松浩史とのハーモニーはため息が漏れるほど心に突き刺さってきた。

THE SPELLBOUNDのタフな配信ライブで小林祐介というボーカリストの抜きん出た実力は既に知っていたはずなのに、生で、その場で響き渡る歌声の美しさは圧倒的で、瞬く間にその歌の力に飲み込まれてしまった。

ひたすらに美しい音像を奏でてくれた序盤から、シーケンスを他用する近年の曲が現れ始めると、本番はここからだと言わんばかりに音の密度は一気に増していく。暴力的と言うには些かニュアンスが異なる。表面的には暗く不穏なものに感じさせつつも、根源的に美しさという軸を失わない彼らの楽曲は、幸福に満ち溢れた、肯定的なものなのだ。

中でも最新アルバム「At The Beginning」からの「楽園」におけるガムランサウンドの勢いそのままに繋がる「NEO TOKYO」は笑いがこみあげてくるほどに凄まじいものだった。2019年に開催された彼らのワンマンライブ「NEO TOKYO -20191111-」において初披露されたこの曲は、大友克洋による漫画作品『AKIRA』そのアニメ版において音楽を担当した芸能山城組の楽曲が元となっている。


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民族音楽を用いることで近未来SF作品の雰囲気を見事に表現し今なお根強い人気を持つ楽曲と、そこをベースに彼らの元々の楽曲である「TOKYO」とインストアレンジを組み合わせた「NEO TOKYO」は現代と未来、原始の要素を併せ持つダンスブルなサウンドとして圧倒的な存在感を纏っていた。


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まるで生命力を直接ぶつけられているかのようだった。堰を切ったようにうねりを上げて襲いかかってくる民族的リズムは何かの儀式を思わせ、彼らのみならず観客をも覚醒させていく。ギターを手放しハンドマイク片手に踊り狂う小林祐介とホールを縦横無尽に駆け巡る照明のうるさいくらいの眩しさが同期する。放射状に広がる、枝葉のように伸びて行く。ああ、僕は今、ライブを観ている。画面越しではない。本物が今目の前にある。パンデミック以降経験することのできなかったあの非日常の坩堝にいる。その興奮を極上の練度でもって味わっている。僕は今、まさに幸福の絶頂にいるのだと思った。

 

「次が最後の曲です」というMCが小林祐介から発せられると、僕は露骨に落胆した。突然眼の前の道が途切れてしまったように。ふと街灯から灯が消えてしまったかのように。それほどまでに今日のこのステージは最高のものだったのだ。

一般的にバンドの最盛期というものを考えたとき、僕の中では常に過去の彼らを位置づけていた気がする。いくら自分たちの楽曲に自信があろうと、場慣れし経験を積んで、そうして生み出した新譜をして「これが最高傑作です」「今が一番です」と喧伝しようとも、その通りに安易に反応できるものではない。「好きだよ」「悪くないよ」と本心からそう思っていても、過去からついて回る名曲たちには抑えきれない興奮を覚えてしまう。嗜好は正直だ。積み上げてきた熱がそう反射するのだ。

ギターロックバンドとしてキャリアをスタートさせたTHE NOVEMBERSは2019年の7thアルバム「ANGELS」からサウンドデザインを大きく変化させた。臆することなく飛び込み、そうして進化を続ける。常に自分たちを更新していく彼らは、今こそが最盛期なのだ。その様をこうして見届けられることは僕にとって至上の喜びに違いない。落胆できることを今は噛みしめろ。それはきっと肥やしとなって次なる芽吹きへと変わっていく。そう信頼を生むくらいには素晴らしいステージだったのだ。

 

終演を迎え、あの空間の熱気に後ろ髪を引かれる思いで会場を出ると、スタッフから一枚の紙を手渡される。今日の曲順に歌詞のワンフレーズを並べたフライヤーだ。アンコールができない代わりの、彼らからの粋な計らい。

歌はやがて空へと吸い込まれてしまう。刻んだものはいつかは風化して消えてしまう。けれどこうして形になるものを残してくれるのであれば、それも悪くはない。フワフワとした心地よい疲労感を覚えながらもうとっくに心を掴まれている僕は、このズルく優しくお人好しで人誑しな彼らをまたひとつ好きになってしまうのだ。

 

外に出る。雨は上がっていた。雨とともにやってきた彼らは雨とともに去っていった。

今度もまた雨の日に、いい未来で、いい顔で、会いましょう。

 

 

セットリスト

  1. ANGELS
  2. きれいな海
  3. 美しい火
  4. 最近あなたの暮らしはどう
  5. GIFT
  6. Hallelujah
  7. Close To Me
  8. Rainbow
  9. 楽園
  10. NEO TOKYO
  11. New York
  12. BAD DREAM
  13. 黒い虹
  14. いこうよ
  15. 新曲

 

 

ラッセラー。🍆