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エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

遅ればせながら特定キャラの冷遇がひどい、Basesonの最新作「戦国恋姫X〜乙女絢爛☆戦国絵巻〜」の感想を書いてみる

Basesonの最新作「戦国恋姫X〜乙女絢爛☆戦国絵巻〜」の感想です。何気に初のBasesonです。

 

※以下はネタバレありにつきご注意を

 

基本情報

舞台が戦国時代という背景からか殺伐とした描写は多少ありますが、全体的にはライトな雰囲気。登場キャラはほぼ女性で構成されており、ハーレムゲーの名に恥じない潔い装いと言えます。
恋姫シリーズ最新作ということですが主人公は変更されており、実質的な完全新作。前作未プレイでも何ら支障はありません。主人公の変更に関しては賛否両論あったようですが、前作の小ネタがちょこちょこと登場することもあってシリーズファンでも楽しめるつくりとなっています。

 

物語の流れ

物語は桶狭間で久遠が今川義元を討ち破ったところから開始され、 そこから

といった具合にある程度史実に則った、織田家を中心とした選択肢なしの一直線で話が進んでいきます。中盤以降は主人公と久遠が別行動をとることになりキャラ達の出番(主人公の部隊である剣丞隊とそれ以外)に大きく影響を与えていくことになります。

 

久遠、不遇すぎやしないか?

点数をつけるなら65点。キャラゲーというのはそもそも大きな満足感を得られない構成になってるんじゃないかと個人的には思います。それは様々なキャラを個性的に仕上げつつある程度均等に活躍の機会を与える必要性や、にもかかわらず便利なキャラを優遇せざるをえない物語上の性質が絡んできて、要は潜在的な二律背反を抱えているように感じてしまうからです。特に主としてハーレムゲーをプレイしない僕としてはお気に入りのキャラを数人見つけられれば御の字。描写に物足りなさを覚えてもそこそこの満足感を得られればそれでOKと最初から妥協姿勢でいたのは間違いありません。

しかし予定通りにそこそこの満足感を得られたのなら僕は本作に70点をつけていたはずなのですが、そこからマイナス5点しているのは明確な理由があります。

それはメインヒロインである久遠の不遇っぷりという一点です。

久遠は主人公剣丞が異世界で最初に出会い、後に志を共にし最初の妻とする、いわば半身と言ってもいい存在です。しかし剣丞が様々な経験を経て人間的に成長していくのに対して、久遠のそうした姿はまったくと言っていいほど描かれません。剣丞と別行動となる金ヶ崎の退き口以降でもたまに描写されるのは剣丞の安否を気遣い心を傷めている様子のみです。

なぜ久遠の、というよりもなぜ剣丞だけの成長しか描かれなかったのか。それは偏に成長を促す存在の有無でしょう。

森可成—通称桐琴—はキチガイめいた言動が問題視されるも自らの行いになんら迷いのない、一本芯の通った人物として描かれています。異世界での常識に翻弄され己の立ち位置すら定められない主人公からしてみれば他者を顧みない桐琴の生き方は尊敬と言えずとも、思わずその背中を追いかけたくなるほどに気持ちの良いものに映ったはずです。そんな桐琴が武士とは何か、上に立つ者とは何かを命を賭して伝えてくれたことは、敗色濃厚な絶望の中でも剣丞と剣丞隊の心を最後まで奮い立たせる基盤となりました。

一方の久遠の場合、本来であれば桐琴の様な存在は少なくとも3人いたはずです。実父である織田信秀、傅役の平手政秀、そして義父である斎藤道三。しかしこの3名はゲーム開始時点で既に故人であり語られてもTIPSによる簡単な説明のみに留まります。

つまり、久遠は成長しなかったのではなく、既に成長した後だったのです。描かれなかったのではなく、描く必要性がなかったのです。ただ果たしてその深慮はユーザーのもとに届いたのでしょうか。戦の後、一人涙する姿は、そして次第に剣丞に依存するかのような言動はその成長に直結するものだったと考えるに至るものだったのでしょうか。

一人期待していたキャラがいました。それは戦国時代の三大梟雄とも称された松永弾正久秀―通称白百合—です。下剋上の代名詞と謳われた彼女は、鬼に与した三好衆を「もはや武士に非ず」と見限り久遠達に降ります。たびたび織田家を裏切ることを唆すも、それは鬼を討伐した後とでも言うように協力体制を維持し続け、その後はこれといって大した描写のないまま物語は幕を閉じてしまいます。

ハーレムゲーとして、各武将と争う殺伐とした関係性よりも、それとは異なる「鬼」という明確な外敵を作り出すことでライトな雰囲気の維持に努めたことが白百合の本来の魅力、彼女にしかできないことを奪ってしまったのであれば非常に残念でなりません。

シリーズものということでおそらくこれからも何かしらの展開は期待できるのでしょう。作中でも鬼の残党を討伐するべく全国行脚をするかも、といった物語のこれからを示唆するセリフもあったことですし。しかしそれは登場人物たちの増加、それに伴う既存キャラの描写の薄さにも繋がりかねません。次作をプレイするかは正直まだ分かりません(そもそも発表もされてません)が、その際にはメインヒロインである彼女に相応しい舞台が用意されていることを願っています。

 

おまけ・キャラ雑感

以下にあげるのは個人的に好きなキャラや優遇が半端ないキャラ、もしくは逆にもうちょっとどうにかならなかったのか?というキャラの雑感。

 

久遠

織田信長。上記でも語った通りメインヒロインの割に活躍の場がほとんどない冷遇っぷり。また金ヶ崎退き口にて剣丞と別行動をとる羽目になるので中盤以降は余計に出番がない。終盤の本能寺の変である程度の見せ場はあるものの、最後は小夜叉に全てを持っていかれてしまう。合掌。そしてお家芸の未所持も冷遇っぷりに拍車をかけている。同じ正室の一葉(足利義輝)や美空(長尾景虎)、光璃(武田信玄)は圧倒的威力のお家芸を持っているのにも関わらず。というか奥さんの帰蝶にもあるのになんでだ。
織田家棟梁として一身に重責を担っているような描写が何度も出てくるが、それならばそこに至るまでの過去編の一つや二つあればもっとこのキャラに愛着が湧いただろうに、もったいない。万人に出番を与えざるをえない、ハーレムゲーの弊害を一身に受けたように思える。
 

詩乃

竹中半兵衛重治。ゲーム開始時点では斎藤家家臣。史実通りにわずか数名で稲葉山城を奪還した際、偵察に赴いた剣丞と出会い「君を奪う」と宣言されたことで惚れる(チョロイン)。後に城を主君に返還した際に斎藤家家臣らに追い詰められるが、剣丞に間一髪救出されたことでその身の全てを剣丞に捧げることを決意し、織田家に加わった後は軍師として無鉄砲になりがちな剣丞を支え続ける。
いつの間にやら剣丞に惚れている各ヒロインとは違い、明確にそうしたシーンがCG付きで描写されているというだけでも優遇されているキャラ(いや普通はあるもんだけどね)。戦闘シーンに焦点が当たりがちな本作においては、中盤以降腕に覚えあるトンデモキャラが非常に多くなってしまう。そんな状況でも剣丞からの信頼は揺らがず、そしてお家芸がないにも関わらず前線にて隊の指揮を取り続ける姿は純粋に格好いい。
 

一葉&幽

足利幕府最高権力者である足利義輝とその御側衆である細川藤孝
時の将軍とその従者という政治的に便利な立場からか、中盤以降非常に出番が多い。一葉のお家芸三千世界」は様々な世界から武器を召喚・攻撃する別名「ゲートオブムロマチ」(公式より)と呼ばれ、一葉の出番の多さも相まって劇中で最もよく目にするお家芸となっている。
劇中残念美人っぷりを幾度となく披露し場を散々かき回す愛すべきフリーダム将軍様と、その主人の突拍子のない行動に振り回されるも本人も飄々とした食えない性格の二人のやり取りは、声優さんの熱演もあって道中ずっと観てたいくらいには気に入りました。
 

小波

服部半蔵正成。伊賀忍者。剣丞の部隊が裏方的・隠密的行動を得意とすることもあって松平家から主人公のもとへ派遣されることになる。登場人物で唯一、二つのお家芸を持つという待遇の良さ。特に遠く離れた仲間との連絡を可能とするとんでもない反則技「句伝無量」は部隊の性質上欠かせない存在となり常に剣丞の側にいて支えることに。感情の起伏が乏しい冷徹な少女が剣丞の分け隔てない人柄に次第に態度を軟化させ惹かれていく描写はあざとい。あまりにもあざとい。でもそれが可愛い。
 

松平元康。後の徳川家康。鬼討伐を目的とした織田・長尾・武田を中心とする連合に加わるがあくまで鬼を退治するまでの協力体制に過ぎないと剣丞らとも一定の距離を保ち、天下統一後を見据えた行動を取り続ける様はまさに史実通りの狸と言える。
全年齢版ではそのような一貫した態度だったようだが、シナリオが追加された本作では遂に剣丞に陥落。エロ野獣と化し、剣丞を犯す側に。周囲の女武将達が次々と主人公に惚れていくなか、冷静に剣丞を見定めていた独特な存在感は貴重だっただけになんとも言えないもったい無さを感じてしまう。
 

桐琴

織田家家臣である森可成。ヒャッハーと奇声を上げて敵を次々と屠っていく様はまさに戦闘狂。金ヶ崎の退き口にて鬼の大群を前に一人殿を務め壮絶な戦死を遂げるが、その際に仲間が犠牲になることに耐えられず自ら殿を務めようとした剣丞を叱りつけ、小を殺し大を生かす将としての心構えを説き成長を促した。
「大人」という立ち位置のキャラがさほど見受けられない本作において、剣丞に将たる覚悟と明確な意思を植え付けた存在。唯一子持ち(養子縁組などは除く)というのも剣丞に対する「小僧」という呼称や普段の態度に表れている。あと服装が途方もなくエロい。もはや着ていない。ふぅ…(意味深
 

小夜叉

森可成の娘 森長可。活発そうな愛くるしい姿とは裏腹に母桐琴同じくヒャッハー。序盤から口の悪さ、気の短さを余すところなく披露し正直「めんどくさいなこいつ」と辟易した覚えが。けれど母の戦死をきっかけにそうした態度は鳴りを潜め、その際に引き継いだ森家の棟梁という立場に責任感を持ち始める。鬼討伐連合が締結後、剣丞と言葉少なにただ拳を突き合わす描写は尺は短いが本作でも屈指の名シーンかと。最終盤、ラスボスに対してこれまでの憤りをぶつける様は主役とメインヒロインを見事に食ってしまっている。本作で最も成長を見せつけたキャラであり、最も優遇されたキャラだとも言える。
 

姫野

風魔小太郎。その勇猛ぶりよりも主家である北条家が滅亡した後の活動がある意味有名な武将。忍びの矜持もなんのその。「だって生き残らなきゃ意味ないじゃん!」とでも言いたげな短絡的思考を女子高生的キャラのそれに当てはめるのって割と面白いなぁと素直に感心。