Nothing is difficult to those who have the will

エロゲとオルタナ。そんな感じ。ちょこちょこと書き綴っていこうと思います。

ハッピー・バースデー

カナリヤです。2ヶ月以上更新が空いてしまいました。なんたるちや。けれど本日この日今日だけは更新しないわけにはいきません。慌てて筆を取り突貫で仕上げた次第。

 

 

 

「今夜も良い夜にしたい、よろしく!」

 

前フリもなく、ガツンとくるロックチューンを数曲聴かせた後にthe pillowsのボーカル山中さわおがステージの上からそう語りかける。ライブではいつも口にするお決まりのセリフだけれど、その時その時常に精一杯のパフォーマンスを披露するさわおさんらしさが集約された、印象的な一言だ。観客もすかさず目一杯の歓声と拳を振り上げてそれに応える。流石は歴戦のバスターズといったところか。実に手馴れたものだ。


今僕はとあるDVDを観ながらこの文章を書いている。2004年9月16日、今から11年前の今日、SHIBUYA-AXで行われたthe pillowsの15th aniversaryライブ。その映像を収録したDVD「916」だ。

916“15th Anniversary Special Live DVD”

916“15th Anniversary Special Live DVD”

 

 ーー良い夜にしたい。

 

僕がその一言を耳にするのは数年ぶりになる。というか、より正確に言えばthe pillowsのライヴをここ数年観ようとはしてこなかったんだ。

 

ライブって実はそこまで好きというわけじゃない。

いやのっけからネガティブで申し訳ない。アーティストの生音は確かに惹かれるものがあるのは事実だ。CD音源では味わいきれない、ライブハウスに響きわたる爆音は凄まじいの一言。観客とアーティストが一体となって創りあげていく中毒性ある非日常の空間は一度でも足を運んだことのある人なら誰とだって分かり合えるくらい、とても魅力のあるものだとは思う。


でも観客のマナーに霹靂する場面だって多々ある。それにドリング代含めてのチケット代、ライブTシャツやその他グッズも結構な金額になる。当時は他にお金を回したいという事情もあった。
今思えばだけど、そういう発想が出てくる時点で僕としては音楽から少し距離を置きたくなっていたのかもしれない。

まあ大丈夫、ライブに行かなくたってべつに音楽を聴かなくなるわけじゃなし。そんな風に思っていた。

 

だけど不思議なもので、一旦ライブから興味を離してしまったら音楽への興味も段々と薄れてしまっていた。外出するたびに付けていたイヤホンがしだいに埃をかぶるようになって、CDを買う機会もなんとなく少なくなって、僕の周りから自然と音楽に触れる機会がなくなっていくうちに、音楽に思いを馳せること自体が失われていった。

最初はその薄れ方も自分では気づかないくらい微々たるもので、でもそれを問題と思わない気持ちに比例していって、気づけばその希薄さはどんどんあからさまになっていった。

 

でも、ふと思った。
そういうものなんじゃないだろうか。
子供の頃に夢中だった遊びをいつのまにか遊び方すら忘れてしまったときみたいに。
あんなに好きだった、恋い焦がれていた初恋の女の子を今ではただ懐かしく思うだけのように。
音楽というものも僕の中で一区切りがついた。付き合い方に距離が生まれてしまってもきっとそういうことなんじゃないかと思って、納得しかけていた。

 


ハッピー・バースデー、という曲がある。

ハッピー・バースデー

ハッピー・バースデー

 

 2年前の2013年、1年間の“休憩”を経て彼らの結成日である9月16日にリリースされたシングル。
もとは自殺未遂者の気持ちを歌にこめたというが、そこから窺える心情はまさしくバンドソングのそれだ。ロック・バラード調に仕上がったその新譜は、「ハイブリッドレインボウ」や「ストレンジカメレオン」など彼らの数多の名曲にも決して引けを取らないものだと確信をもって言える。

 

僕は発表から1年後、記念日でもなんでもない日にその曲を聴いた。一発で好きになって、何度も何度も夢中で聴き続け、そして気づいたら泣いてしまっていた。彼らが活動休止したことにもさして興味を示さなかった、そして活動再開をアナウンスしたときも同様だったこの僕が。


だってあまりにも卑怯じゃないか。黄昏を思わせる単純だけど切なく美しいリフも、25年を経てもなお歩みを止める気の無い、そしてその年月の重さを思わせる歌詞も。暗闇のなかからそれでも希望を見出そうとする、そんな彼らの変わらない姿がどうしたって眩しかった。なぜ彼らから目を逸らしていたんだろう。もういいやって立ち止まった時だって彼らはひたすらに足を前に運んでいた。先入観でくすんだ未来図さえも彼らは塗り変えていったのに。

 

 

「…これからだかんな!」

 

今から5年ほど前、20th aniversaryライブの時だ。

 

PIED PIPER GO TO YESTERDAY [DVD]

PIED PIPER GO TO YESTERDAY [DVD]

 

 

ダブルアンコールまでの27曲を全力で歌い切ったさわおさんは、去り際観客席を指差しながら不敵な笑みを浮かべつつそう言い放った。きっとテンションが上がって上がって仕方なかったんだろうな。いやもしかしたら前もって言おうと決めていたのかもしれない。かっこいいとも、ダサいとも思えるその姿に当時の僕は興奮と感動でどうしようもなく震えてしまったのを思い出す。

 

そしてハッピー・バースデーを聴いて、僕はまた同じような衝動に駆られる。
だって、本当に「これから」だったんだから。

 

記憶の中を歌が流れている。
今度またライヴに行こう。歓声をあげて手を振り上げて、そうして彼らとともにもう一度足跡を残していこう。

 

HAPPY BIRTHDAY,the pillows!!

 

26周年おめでとう。

今日万感の思いを込めて、素直にそう言葉にできることを、僕は本当に誇らしく思うんだ。


the pillows / 「ハッピー・バースデー」MUSIC VIDEO Short Ver. - YouTube